授業コード 24011700 単位数 2
科目名 社会学文献講読演習Ⅳ クラス
履修期 第4学期 カリキュラム *下表参考
担当者 池原 エリコ 配当年次 *下表参考

授業の題目 主題目:占領空間における「沈黙・抵抗・当事者性」
副題目:大城立裕『カクテル・パーティー』を実存的・構造的に読み解く
学修の概要 本演習では、大城立裕の『カクテル・パーティー』を対象テキストとし、圧倒的な権力の不平等(米軍統治)と直面した個人が、いかにして「傍観者」であることを辞め、自らの主体性と責任を取り戻すかというプロセスを社会学的に考察します。
本作は、「アメリカ(加害対沖縄(被害)」という単純な二項対立の構図に収まりません。 主人公の内に潜む戦時中の加害記憶(中国戦線)、周囲の人間たちの保身や沈黙、そして「米琉親善」という虚構の日常が、少女暴行事件という決定的な暴力を機に瓦解していきます。
演習では、客観的な中立論や他人事としての分析を厳しく退けます。制度の不条理(裁けない法)を前にして、個人がどのような倫理的決断を迫られるのかを精読し、受講生自身が「自らの社会的ポジショナリティ(立場性)」を問い直す自律的な議論の場を創出します。
学修の到達目標 1. 「傍観者性の拒絶」と当事者性の獲得:不条理な社会構造や暴力を前にしたとき、自身が「沈黙や同調」を通じていかにその構造を維持・再生産しているかを自覚し、論理的に説明できる。
2. 重層的な責任の理解:単純な被害/加害の二分法を超え、歴史的な負の遺産(過去の加害)と現在の苦境(現在の被害)が交錯する中で、個人が負うべき「責任(Responsibility)」のあり方を考察できる。
3. 限界状況における抵抗の論理化:法や制度(米軍の裁判権など)が機能しない極限状態において、勝てないと分かっていても「声を上げる(告訴する)」という行為が持つ、脱植民地主義的な主体の回復の意味を理解できる。
授業計画 第1回 第1部:日常に潜む「否認」と構造への加担(第1回〜第4回)
オリエンテーション/ 演習の進め方。 批評家(傍観者)としてではなく、当事者としてテキストに向き合うための構え。
第2回 歴史的文脈の共有 / 1960年代の米軍統治下(復帰前)の沖縄。法的な主権の不在という圧倒的な現実。
第3回 サルトルの「アンガージュマン」と「不誠実(mauvaise foi)」 / 自由でありながら、自ら目をつぶり構造に身を委ねる人間の心理を学ぶ。
第4回 前章の精読:親善という名の「否認」 / 基地内パーティーにおける米・日・中・沖の対話。主人公が和やかな空気に同調しようとする時、彼は何を「見ないふり(否認)」しているのか。
第5回 第2部:決定的暴力と「傍観者席」の喪失(第5回〜第9回)
後章の精読①:剥ぎ取られる仮面 / 少女暴行事件の発生。
第6回 後章の精読②:二人称「お前」の倫理 / 一人称「私」から二人称「お前」への文体転換。
第7回 法社会学:裁けない法と「主権の壁」 / 軍事主権の前に地元警察が機能しない不条理。
第8回 グループ討論:沈黙の構造 / 親善関係の維持や世間体を理由に、事件の告発を思いとどまらせようとする周囲の圧力。
第9回 中間リフレクション
第10回 第3部:歴史の重層性と主体の回復(第10回〜第12回)
後章の精読③:中国戦線の記憶 / 中国人弁護士から突きつけられる、主人公の過去の加害行為。
第11回 純粋な被害者という幻想の解体 / 「過去に非がある人間は、現在の被害を訴えてはいけないのか」という問い。無謬性(傷のない清廉潔白さ)を求める社会の視線と、引き裂かれる個人の倫理。
第12回 脱植民地主義的な「抵抗」の誕生 / 勝てない裁判(告訴)へ踏み切る主人公の決意。
第13回 第4部:現代への架橋と主体的問い立て(第13回〜第15回)
制度や国家の暴力装置に組み込まれた個人が、それでもなお手放してはならない「個人的責任」について。
第14回 オンデマンド (1/4):'現代社会における「否認」の構造
第15回 最終総括:引き裂かれながら思考する / 演習全体の振り返り。安易な二項対立や中立論に逃げず、不条理のただ中で問いを立て続けることの総括。
授業外学習の課題 事前学修(2時間程度):
テキストの通読: 指定された章を読み、全体の論理構成を把握すること。
キーワードの抽出: ワークシートに記載された英語のキーフレーズ(Key Phrases)を精読し、自分なりの仮訳と疑問点をノートにまとめておくこと。
議論用メモの作成: ワークシート内の「Question」に対し、自分の経験や現代社会の事例を最低一つ挙げたメモを準備すること。

事後学修(2時間程度):
議論のリフレクション: 授業内で行われた議論を振り返り、自分の考えがどう変化したか、あるいは新たな問いが生まれたかをリフレクション・ログ(短い感想文)に記録すること。
履修上の注意事項 公認欠席は期末試験の受験要件には影響しないように配慮します。
公認欠席時の資料は配布しますので、指示に従って受け取ってください。
成績評価の方法・基準 授業への積極的参加 (Participation) 40% 議論への貢献、他者の意見に対する誠実な応答。
事前準備ワークシート (Worksheets) 20% 予習時間が適切に確保され、独自の問いや視点を持って授業に臨んでいるか。
リフレクション・ログ (Reflective Logs) 40% 授業での学びを自分なりに咀嚼し、英語概念を正確に使いこなせているか。
テキスト 『カクテル パーティー』 大城 立裕(著)
出版社: 岩波現代文庫版
発売日:
参考文献 追加資料は授業中に配布します。
主な関連科目
オフィスアワー及び
質問・相談への対応
授業の前後でも質問に応じますが、オフィスアワーでも対応できます。その際はメールにて予約をとってください。授業内容に関する質問ならば、次回の講義冒頭で全体フィードバックという形で行います。

■カリキュラム情報
所属 ナンバリングコード 適用入学年度 配当年次 身につく能力
知識・技能 思考力 判断力 表現力 協創力
人文学部社会学科(専門演習科目) 24400 2024~2026 3・4 - -