授業コード | 90340300 | 単位数 | 2 |
科目名 | 臨床心理面接特論Ⅰ(心理支援に関する理論と実践) | クラス | |
履修期 | 前期授業 | カリキュラム | *下表参考 |
担当者 | 森平 准次 | 配当年次 | *下表参考 |
授業の題目 | 臨床心理面接の実践における基本的な理論の理解 |
学修の概要 | 臨床心理面接、すなわち心理支援の実践に必要となる理論について、教員からの解説を基に履修生の発表や議論を通じて学ぶ。臨床心理面接の実践において理論は重要な基礎となっている。理論によって実践を行うことが心理臨床家の専門性の一つとして挙げられるであろう。また、実践を通して理論に立ち返り、理論をより精緻なものにしていくことが求められる。本講義では、そのような実践にかかわる心理臨床家としての基本的な理論を基に検討し、実践をより豊かで適切なものにしていく能力を涵養する。 【実務経験内容:精神科クリニック,学生相談室,私設心理臨床教育センターにおける心理学的アセスメントや心理学的支援(啓発を含む)を実践してきました。その経験から本授業において、臨床心理面接における実践のリアリティを伝えるとともに、そこに理論がどのようにかかわるかを考えていきます。】 |
学修の到達目標 | 1. クライエントの主訴や語りを理解するために必要な理論について説明することができる。 2. クライエントに対するセラピストの反応を理論的に説明できる。 |
授業計画 | 第1回 | オリエンテーション:授業のねらい・展開の概要、学習の進め方、成績評価の方法・基準 初回面接について 初回面接は,セラピストとクライエントが初めて顔を合わせる時間になります。そこでクライエントはセラピストの様相を感じ取り,また雰囲気や自分とのかかわりなどを体験していきます。セラピストはそこで関係性を構築しようとし,アセスメントしようとし,また臨床的な可能性を探っていきます。一方クライエントも,セラピストの在りようや能力などについてアセスメントしていくものです。そこでの体験は,その後臨床心理面接を継続するかどうか,継続するとしたらどのように,何を目指していくのか,といった判断に影響します。 また,実は初回面接以前から,面接申し込み表などを通じて,セラピストはクライエントに逆転移を起こしているものです。 初回面接について議論します。 初回面接の意味について基本的な事柄を説明できる。 |
第2回 | 治療構造論 心理療法の治療構造とは,面接の時間や場所,面接の頻度,といった枠組みを一般にいいます。しかしこの構造はクライエントの内的な枠組みともなり,クライエントの心の作業を守るものとして比ゆ的に捉えることができます。クライエントは構造のなかで守られ、また日常とは異なる非日常的な心の体験をします。そのような治療構造についての理論を学び、議論します。 治療構造について基本的な事柄を説明できる。 |
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第3回 | インテーク面接,アセスメント面接,心理面接の導入 継続的に心理面接を行う場合、最初の面接をインテーク面接や受理面接といいます。そして継続の初期にアセスメントのための面接を行うことになります。アセスメントは面接における治療者の介入と有機的に関連していきます。また、アセスメントは治療者の依拠するオリエンテーションや現場によって異なる様相を帯びることになります。 病態水準、知的発達の程度、パーソナリティ、といった側面から立体的にクライエントを理解していきます。 面接の初期について基本的な事柄を説明できる。 |
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第4回 | 統合的心理療法(オンデマンド) 心理臨床における学派を概観します。具体的には深層心理学、人間性心理学、認知行動療法、についてそれぞれの学派の発生とその後の展開を見ていきます。 そのうえで、実際の心理面接と学派に依拠するということについて議論します。そのうえで、心理療法を統合していく動きについて紹介します。心理療法統合の4つの側面について検討します。 心理療法の統合について基本的な事柄を説明できる。 |
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第5回 | 精神分析的心理療法における面接 精神分析には多くの理論が成立しており,またFreud以降複数の学派が派生してきています。ここでは古典的な精神分析の発達論や力動論を復習したうえで転移分析,解釈,について議論します。 精神分析的心理療法について基本的な事柄を説明できる。 |
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第6回 | 分析心理学における面接 いわゆるユング心理学も,深層心理学の一つの流れになります。ユング心理学は分析心理学ともよばれ,精神分析とは異なる位相の心の現象を理解しようとしています。分析心理学における転移の理解,心理療法における第三のもの,といった概念を学びます。 分析心理学について基本的な事柄を説明できる。 |
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第7回 | 来談者中心療法における面接 来談者中心療法は,治療者―クライエント関係について人間的なとらえ方をしているといってよいでしょう。ここではロジャーズの提唱した面接の条件について振り返り,特に共感的理解というときの治療者の心理学的体験を捉えなおすために議論します。 来談者中心療法と共感的理解の意味について基本的な事柄を説明できる。 |
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第8回 | 認知行動療法における面接 認知行動療法では,無意識といったことはあまり主題にならず,認知や行動について検討する作業が前景にあります。アジェンダ,ホームワーク,といったことも含め,認知行動療法の構造について検討します。また,近年のスキーマ療法などにみられる,それまでの認知行動療法で扱えなかった心理学的課題についても見つめなおします。 臨床心理面接における認知と行動の扱いについて基本的な事柄を説明できる。 |
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第9回 | イメージへのアプローチ イメージは,臨床心理面接では例えば箱庭,描画,あるいはイメージ療法などにおいて表現されます。しかしそれに留まらず,プレイセラピーに現れるシンボル,夢分析における夢,などもイメージの現れとして捉えられます。これらのイメージが臨床心理面接でどのように扱われるのか,またそれはクライエントにとってどのような意味をもつのか,議論します。 臨床心理面接におけるイメージの意味について基本的な事柄を説明できる。 |
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第10回 | 身体へのアプローチ 臨床心理面接においては身体に注意を向けることがあります。技法として確立しているものでは自律訓練法,マインドフルネス,フェルトセンス/フォーカシング,などを挙げることができます。これらの技法はそれぞれニュアンスや実践は異なるものの,時に共通する体験をもたらすこともあるでしょう。また動作法では実際にクライエントの身体に触れたり,身体の動作を指示したりといったこともあります。これらの技法について考える中で,心理療法と身体,心と体,心身一如,といったことが視座に入ってきます。 心理療法で身体に注意を向けることの意味について基本的な事柄を説明できる。 |
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第11回 | 家族との関わり クライエントの抱える心理学的課題には、家族の問題やコミュニティとのかかわりで発生しているテーマが多く見られます。 クライエントの家族との関係をどう見ていくのか、また家族療法で母子を同席させて行う面接はどのような特徴があるのか、といったことについて議論します。 家族について語る意味について基本的な事柄を説明できる。 |
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第12回 | コミュニティとの関わり(オンデマンド) 現代における心理臨床では、スクールカウンセリングなど、コミュニティで面接を行うこともあり、そこではコミュニティならではのむずかしさがあります。現代における心理臨床では、スクールカウンセリングなど、コミュニティで面接を行うこともお送り、そこではコミュニティならではのむずかしさがあります。ここでは、コミュニティにおける臨床心理面接の特徴と留意点について学びます。 コミュニティにおける臨床心理面接について基本的な事柄を説明できる。 |
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第13回 | マイクロカウンセリング マイクロカウンセリングは、技法を小さな(ミクロな)単位で抽出したものです。しかし、実際の面接では、そのような小さな技法をクライエントにマニュアルのように使えばよいというものではありません。 ここでは、その基本的なかかわり技法、積極的にかかわっていく技法について振り返ります。特に積極的な介入はクライエントにとって侵襲的なものにもなりえます。ここではそのかかわりの意味について検討したうえで、ロールプレイを行い、実践的な力を身につけます。 技法の意味について基本的な事柄を説明できる。 |
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第14回 | 臨床事例研究論文の講読 臨床心理実践では事例研究を行うことも重要な学修であり研究です。事例研究では、あるテーマに基づいて事例を報告し、その考察をしていきます。ここでは事例研究論文を1編精読したうえで、その事例の面接について議論します。 事例研究の意味について基本的な事柄を説明できる。 |
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第15回 | 臨床心理面接の独自性と専門性 臨床心理面接がその独自性と専門性を担保されるのは,理論に基づいて面接を実践するところにある,という視点からこれまでの議論を総括します。理論に基づく,ということが治療者にとって面接をどのように体験されるかについて検討します。具体的には,次の内容について議論します。実際の面接場面で理論のことを考えて面接をするわけではないでしょう。クライエントとのかかわりの中で生き生きとクライエントの語りを追っていくことになるはずです。では,そのようなクライエントとの面接のさなかに,理論がどのように機能するのか。これらについて創造的に捉えていくことを目指します。 臨床心理面接の独自性と専門性について基本的な事柄を説明できる。 |
授業外学習の課題 | 毎回、指定した論文の精読をしておくこと。また、授業で学んだ内容をまとめること。 事前学習・事後学習には、それぞれおおよそ120分を必要とする。 |
履修上の注意事項 | 1. ブレンド型授業を実施する。オンデマンド授業では、メールにて学修内容の指示を行う。 2. 資料等配布物は,履修生のGoogleドライブ経由で配布し,授業期間終了まで入手できるようにする。 3. 心理臨床に携わるという意識をしっかりともち、能動的、積極的に授業に臨むこと。 4. 公認欠席は欠席とカウントしない。 5. 公認欠席と発表が重なった場合は代替措置をとる。 |
成績評価の方法・基準 | 課題レポート(40%),授業での議論への参加の内容・質(60%) 成績評価の基準については,別添の評価ルーブリックを参照のこと。 |
テキスト | 指定しない。 |
参考文献 | |
主な関連科目 | 臨床心理面接特論Ⅱ |
オフィスアワー及び 質問・相談への対応 |
授業終了後の質問に応じる。また、メールで随時受ける。 |
添付ファイル | 評価ルーブリック(臨床心理面接特論Ⅰ(心理支援に関する理論と実践)).pdf | 説明 | 評価ルーブリック |
所属 | ナンバリングコード | 適用入学年度 | 配当年次 | 身につく能力 | ||||
知識・技能 | 思考力 | 判断力 | 表現力 | 協創力 | ||||
人文科学研究科M心理学専攻 | - | 2024~2025 | 1・2 | - | - | - | - | - |