授業コード 70004900 単位数 2
科目名 政治と社会(中東) クラス
履修期 後期授業 カリキュラム *下表参考
担当者 船津 靖 配当年次 *下表参考

授業の題目 中東の「聖地の紛争」と国連・日米 Holy Land Conflict in the Mideast: the UN, US, and Japan
学修の概要 中東は人類の文明発祥の地。ピラミッドや聖地エルサレムなど古代のロマンがいっぱいだ。だが今も「王様」や宗教指導者、軍司令官が人々の生死を含む運命を翻弄する。テロや暗殺は日常茶飯事、スパイが暗躍し、特殊部隊が突入し、奇襲攻撃で戦争が始まる。映画のようだが、それが現実だ。国際政治のリアリズム(現実主義)の理論が最もよく当てはまる地域と言われる。
 日本はエネルギー資源の9割を中東に依存している。日本の「赤軍派」はレバノンを拠点に活動した。イスラム過激派による日本人殺害も起きた。日本の同盟国アメリカは聖書の絆からユダヤ国家イスラエルと「特別な関係」にある。第2次トランプ政権は突出してこの傾向が強い。
 軍事と宗教は日本人が国際関係を見るとき最も理解が難しい分野。中東の現実を知ることは国際政治を動かすイデオロギー(政治・宗教思想)と権力政治を理解するのに有益だ。日本が位置する東アジアの地政学も現実主義的な分析を必要としている。パレスチナ紛争に重点を置くが、パレスチナ内部、アラブ・イスラム諸国間の対立も視野に入れる。実際の取材経験を適宜交える。レジュメに若干、英語を含む。
  
【実務経験】
 1994~97年共同通信エルサレム支局長。イスラエル占領地ヨルダン川西岸とガザ地区、米仲介の中東和平交渉、イスラム主義組織ハマスの自爆テロ、ユダヤ教極右のラビン首相暗殺事件などを取材。2000~04年ロンドン特派員。イラク戦争前後のバグダッド、ベイルート、エルサレムへ半年ほど出張取材。外信部中東部会長として中東全体の特派員の指揮、出稿を統括。著書に『パレスチナ 聖地の紛争』『聖書の同盟 アメリカはなぜユダヤ国家を支援するのか』
学修の到達目標  ディプロマポリシーが掲げるThink Globally、国際問題への知識や理解力を中東を素材に養うのが目標。①中東の地理、対立の構図、歴史について基礎的な理解ができるようになる、②原油をはじめ日本にとって意外に身近な地域であることが理解できるようになる、③軍事や宗教の国際関係における大きな役割と国際機関や国際法との関係が理解できるようになる、④日本の同盟国アメリカにとって重要な地域であること、イスラエルとの「特別な関係」が理解できるようになる。
授業計画 第1回 中東NOW:民族・主要国・宗教
 アラブ、ユダヤ、ペルシャ、トルコの4民族と中東の大国の地理、首都、経済のイメージを持てるようになる。
第2回 現在の中東紛争: イスラエルとパレスチナの和平派と反和平派
 ハマスとファタハ、ネタニヤフ政権と野党、米イランなど紛争の基本構図を理解できるようになる。
第3回 聖地エルサレム:シオニズムとパレスチナ
 パレスチナへのユダヤ民族主義者シオニストの入植でアラブ人との衝突が起きた歴史を理解できるようになる。
第4回 第一次中東戦争:イスラエル建国とパレスチナ難民(1948年)
 国連パレスチナ分割決議から第一次中東戦争の停戦までの略史を説明できるようになる
第5回 第二次中東戦争:スエズ動乱(シナイ戦争、1956年)
 エジプトと英仏イスラエルの対立と背景にある仏イスラエル極秘核兵器開発計画の要点を列挙できるようになる。
第6回 第三次中東戦争:エジプトの挑発、イスラエルの軍事占領拡大(1967年)
 東エルサレム、西岸、ガザ、シナイ半島、ゴラン高原をイスラエルが占領した歴史について説明できるようになる
第7回 PLO:「日本赤軍」の空港乱射と「黒い九月」のミュンヘン五輪村襲撃(1972年)
 日本人とパレスチナ人の過激派による観光客や五輪選手へのテロ事件の概要を述べることができるようになる
第8回 第四次中東戦争、シーア派台頭: 奇襲戦争からイスラム革命まで(1973-79年)
 エジプトの奇襲攻撃、石油ショック、和平合意、イラン革命までの70年代の歴史の要点を指摘できるようになる
第9回 ペルシャ湾岸危機・戦争:冷戦後の国際安全保障と日本の孤立(1990-91年)
 イラクのクウェート侵攻への欧米・アラブ共同の軍事制裁と日本の一国平和主義への批判を説明できるようになる
第10回 オスロ合意と自爆テロ:米仲介の和平交渉、反和平派ハマス、ラビン首相暗殺(1973-2000年)
 イスラエルとPLOの歴史的和解、双方の反和平宗教右派のテロや暗殺で揺れた中東の90年代の流れを説明できるようになる
第11回 9.11米同時テロ:和平の挫折、アフガン・イラク戦争(2001-03年)
 中東和平交渉失敗と国際テロ組織アルカイダのテロによるアメリカの「対テロ」戦争の概要を説明できるようになる
第12回 オバマとネタニヤフ:入植地、イラン核問題、アラブの春、「イスラム国」、プーチン(2009-17)
 米の中東撤退政策に伴うアラブ諸国の混乱やスンニ派とシーア派の対立、ロシアの介入について指摘できるようになる
第13回 第1次トランプ政権の親イスラエル政策:米大使館エルサレム移転とアブラハム合意(2017-20年)
 国際法とパレスチナを軽視した米外交、イスラエルとサウジ・湾岸アラブ諸国の接近を説明できるようになる
第14回 テロ、侵攻、国際法:親イラン武装組織と米イスラエルの衝突(2023-24年)
 ハマスの大規模テロ、イスラエルのガザ侵攻、国際法廷の判断など中東の近年の激変の要点を指摘できるようになる
第15回 第2次トランプ政権の親イスラエル政策:米の「ガザ所有」方針と中東の再編:(2025-)
 従来の米中東政策から逸脱し国際法を無視するトランプ政権の一方的政策の影響について説明できるようになる
授業外学習の課題 事前学修(1時間程度)テキストの書籍の参照箇所、Moodleに掲載したレジュメや資料・記事にざっと目を通す。地図をよく見る。中東関係のニュース記事や報道番組を見る。
事後学修(2時間程度)授業中にメモしたノートやMoodleの資料を固有名詞、キーワード、英語を中心に復習する。
 共通の情報インフラとしてNHKのニュース防災アプリhttps://www3.nhk.or.jp/news/(無料)の中東とアメリカ、日本外交に関するニュースを使用する。日本経済新聞(電子版含む)はじめ全国紙や中国新聞の国際面や経済面の中東アメリカ関連ニュースに目配りする。
履修上の注意事項  質問を歓迎する。中東の地図に親しむ。講義内容をノートにとる。自分で調べ補足する。大きなニュースが飛び込めばシラバスを変更する。勉強も仕事も忘却との闘い。各自工夫を。欠席や遅刻の多い学生は歓迎しない。私語は迷惑。成績評価にかかわる不正行為には厳しく対処する。追試は教学センターの手続きに従う。
 中東は複雑だが面白い、と楽しめる向学心のある学生の受講を歓迎する。
 公認欠席は欠席として扱うが、単位認定要件や期末試験の受験要件には影響しないように配慮する。公認欠席時にMoodle掲載以外の資料があれば後日配布する。
成績評価の方法・基準 期末試験約80% 受講状況等20% 期末受験は原則として10回以上の出席が必要だが、個別の事情には柔軟に配慮する。事前に相談を。
テキスト 船津靖著『聖書の同盟 アメリカはなぜユダヤ国家を支援するのか』(河出書房新社、979円)とMoodleに掲載するレジュメや関連記事・資料
参考文献  船津靖著『パレスチナ 聖地の紛争』(中公新書、2011年)電子版、\902 『2024年版 世界地図』(成美堂出版) ボブ・ウッドワード記者の『ブッシュの戦争』『攻撃計画』、パトリック・コバーン著『イラク占領』など随時紹介する。
主な関連科目  アメリカの政治と社会、国際ジャーナリズム論、異文化理解論【宗教社会学】
オフィスアワー及び
質問・相談への対応
 授業中またはMoodleの課題での質問や感想を歓迎し評価する。勉強法や進路などの相談はメール(funatsu@shudo-u.ac.jp)や個人面談で。期末試験についてはMoodle上に講評を掲載する。

■カリキュラム情報
所属 ナンバリングコード 適用入学年度 配当年次 身につく能力
知識・技能 思考力 判断力 表現力 協創力
国際コミュニティ学部国際政治学科(地域研究領域) FGGP30502 2019~2022 3・4 - - - - -
国際コミュニティ学部国際政治学科(地域研究領域) 2023~2025 3・4 - - - - -
国際コミュニティ学部地域行政学科(政治領域) FGRA30312 2018~2022 3・4 - - - - -
国際コミュニティ学部地域行政学科(政治領域) 2023~2025 3・4 - - - - -