授業コード 93210900 単位数 2
科目名 政治・行政研究Ⅳ(ジャーナリズム論) クラス
履修期 後期授業 カリキュラム *下表参考
担当者 船津 靖 配当年次 *下表参考

授業の題目 国際安全保障と憲法9条の報道  Journalism on International Security and Article Ⅸ
学修の概要  戦後日本の政治ジャーナリズムの最大の争点は自衛隊、日米安保と「戦力不保持」「交戦権否認」を明記した憲法9条2項の「矛盾」です。9条は絶対平和主義の極北だ絶賛する理想主義者、占領円滑化のための天皇制維持が目的の敗戦国への武装解除条項にすぎないと批判する現実主義者。さまざまな、時に感情的な議論が80年近くも続いてきました。護憲論者、改憲論者の論旨、関連する国際政治史をたどり、この問題への理解を深めます。日本の安全保障環境が悪化する中、将来の国民的合意の可能性を模索します。
 テキストや参照文献を手掛かりに、院生・学生が自分で選んだ資料を読んで発表し、教員が補足、指導します。資料の選択については院生・学生の関心を十分に聞き取った後、相談して決めます。 日本語と英語の記事、資料、論文、書籍などが対象です。前年度は尖閣諸島をめぐる日中双方の主張と歴史的な事実関係や国際法上の解釈などを、教員と院生が共に勉強しました。
 ジャーナリズムに関する大きな事件が起きた場合は取り上げます。
 以下の授業計画はおおまかな例示です。受講者のニーズに合わせ柔軟に対応します。
【実務経験】
 教員は記者として国内で事件・事故などの司法取材、県政や国政選挙を取材後、モスクワ、エルサレム、ロンドンの特派員、ニュースセンター総合関門、ニューヨーク支局長、国際局幹部、編集・論説委員など報道の実務に携わってきた。近著に『聖書の同盟 アメリカはなぜユダヤ国家を支援するのか』(河出書房新社)
学修の到達目標  戦後日本政治と報道の最大の争点である憲法9条と自衛隊、日米安保の複雑な関係と変遷について理解を深められるようになる。有力紙の党派性が理解できるようになる。英語の記事や論文が読めるようになる。具体的で説得力のある文章が書けるようになる。ジャーナリズムの基盤であるリベラル・デモクラシーと国家安全保障の関係が理解できるようになる。
授業計画 第1回 ガイダンス: 関心領域、基本書
 安全保障、憲法問題の中の関心領域を教員に具体的に伝えることができる
第2回 日本の敗戦: 占領と連合国、GHQ
 日本の敗戦・占領時の連合国とマッカーサーの占領方針を理解できるようになる。
第3回 国際関係: 国連と冷戦
 憲法草案がマッカーサーにより短期間で起草された1946年初頭の国際関係を理解できるようになる。
第4回 リベラリズム:日本国憲法と合衆国憲法
 日本国憲法の中に反映している合衆国憲法のリベラリズムを確認できるようになる。
第5回 成立過程: 9条2項を中心に
 「戦力不保持」を規定する9条2項に対するGHQ内の異論、日本側の驚きと適応を理解できる。
第6回 朝鮮戦争: 自衛隊と米軍基地
 米ソ代理戦争の勃発で日本の再軍備が求められていったプロセスを理解できるようになる。
第7回 憲法解釈: 政府と非武装論
 日米安保体制を前提とした政府の現実的解釈と左派の原理主義的非武装論の対立を理解できる。
第8回 解釈変遷: 冷戦期と冷戦後
 政府解釈の確定過程を冷戦、ポスト冷戦の時代変化に合わせて理解できるようになる。
第9回 解釈改憲: 安保法制
 安倍内閣による安保法制の「解釈改憲」について条文の精密な理解ができるようになる。
第10回 護憲派の変容: 非武装論から旧政府解釈へ
 野党の護憲論が絶対平和主義から集団的自衛権行使反対にシフトしていった過程を理解する。
第11回 2項削除論: リベラルの改憲
 井上達夫東大教授(法哲学)を中心に保守ではなくリベラルの立場からの2項削除論などを学ぶ。
第12回 国際法的解釈:国際協調派の解釈論
 篠田英朗東外大教授の国連憲章、国際法重視の9条解釈を学ぶ。
第13回 海外論調: 世界の中の9条
 米中韓など日本の安全保障とかかわりの深い諸国の識者が9条をどう見ているかを学ぶ。
第14回 小論草稿: 期末レポート準備
 期末レポートの草稿を批評し合うことができる。
第15回 最終まとめ: 小論と発展
 期末レポート作成への作業を確認でき、今後の勉強・研究の優先順位を自覚することができる。
授業外学習の課題 事前学修(2時間程度)日本語の基本書、専門書の該当箇所を事前に読んできてください。
事後学修(2時間程度)授業の論点を整理し必要事項を追加で調べ、期末レポートの一部を書き溜めてください。
 発表を担当とする授業ではキーワード、年表、要約や引用などからなる発表資料を作成し教員に送ってください。
履修上の注意事項  授業時間帯は暫定。変更する可能性があります。教員との連絡を密にしてください。連絡や応答があれば柔軟に対応します。
 期末レポートは自由研究方式ではなく、憲法関連の基本書の一部を厳密に理解し、そこに専門的なコメントを付けるやり方でお願いします。生成AIなどの使用状況や盗用の疑いについては容赦なく問いただします。
 公認欠席は欠席として扱いますが、単位認定要件や資料入手などで学生の不利益にならないよう代替措置を講じるなど配慮します。
成績評価の方法・基準 授業50%、は期末レポート50%。
テキスト  『英文対訳 日本国憲法』(ちくま文庫) 井上達夫『ウクライナ戦争と向き合う』(信山社、法と哲学新書、2022年)、受講者が所持する『憲法』基本書などの中から受講者と相談します。
 参照文献の中から随時、重要な章・節を明示します。NHKのウェブニュース、https://www3.nhk.or.jp/news/(無料)や日本経済新聞をはじめとする全国紙、中国新聞、各国主要メディア(New York Times, Guardian, BBC,CNN, Financial Times)などの電子版などが基礎的情報インフラ。
参考文献  古関彰一『日本国憲法の誕生』(岩波現代文庫)、芦田均『制定の立場で省みる日本国憲法入門 第一集』、金森徳次郎『制定の立場で省みる日本国憲法入門 第二集』、坂田雅裕『憲法9条と安保法制』、五百旗頭誠『日米関係史』、井上達夫『立憲主義のという企て』、篠田英朗『集団的自衛権の思想史』、長谷川毅『暗闘 スターリン、トルーマンと日本降伏』、山尾志桜里『立憲的改憲』など随時紹介する。
主な関連科目 比較政治研究演習Ⅳ(事例研究)
オフィスアワー及び
質問・相談への対応
 質問や相談はメールfunatsu@shudo-u.ac.jpや個人面談でも。学期中の評価は授業中やMoodleで個別にも対応します。期末レポートへの批評は個別の問い合わせにも面談やメールなどで対応します。

■カリキュラム情報
所属 ナンバリングコード 適用入学年度 配当年次 身につく能力
知識・技能 思考力 判断力 表現力 協創力
法学研究科M国際政治学専攻 2017~2021 1・2 - - - - -
法学研究科M国際政治学専攻 2022~2024 1・2 - -