授業コード | 84002600 | 単位数 | 2 |
科目名 | 子ども家庭支援論 | クラス | |
履修期 | 前期授業 | カリキュラム | *下表参考 |
担当者 | 中 みちる | 配当年次 | *下表参考 |
授業の題目 | 子どもを含む家族支援の理論と技法 Family Social Work Theory and Methods |
学修の概要 | 子どもが育つなかで浮上する様々な問題は、子どもの性格や特性の問題でしょうか。それとも親の養育能力の問題でしょうか。それとも解決を支援しきれていない支援者や既存の制度・サービスなどの環境の問題でしょうか。対人支援の実践ではこのような取り組む問題や支援対象者をどう捉えるか、支援するということをどう定義するかという、支援者の姿勢や理解が支援の内容や方法に大きく影響します。 この授業では、取り扱う問題を子どもや家族など当事者に内在するものとしては考えず、子どもや家族が社会生活を送る中で他者との相互作用により問題と意味づけられたものとして捉えます。また、問題=よくないではなく、問題状況のもつ変容力に着目し、解決への取り組みが家族のそれまでの意味づけや行為選択のルールを変え、子どもの成長・発達を促すチャンスとなることを理解し、家族の問題解決力が十分に引き出されるよう計画的に働きかけることを支援とする支援方法論を学んでいきます。 そこでまずは、家庭と社会との関係について、現在の社会的状況、子育て支援制度、家庭の機能、社会的背景・言説が家族成員の意味構成や行為選択に与える影響などの視点から多角的に理解していきます。さらに家庭支援の実践理論として、家族をシステムとして捉え、家族システム間の相互作用が子どもの成長・発達を促進する方向で機能するよう介入するシステム理論的家族療法を中心に、解決志向的な質問法など、ファミリーソーシャルワークの基礎理論と技法を学びます。その上で最後に、今後求められる家庭支援の内容や支援者の専門性を明確にしていきたいと思います。 |
学修の到達目標 | ファミリーソーシャルワークの基本的な理論と技法を学び、以下の習得を目指します。 ・子どもや家族の問題とされている事象をエコロジカルな視点から分析し、説明できるようになる。 ・家族システムについて、得られた情報を理論枠を使って整理し、問題維持パターンの仮説を立てることができるようになる。 またその仮説に基づいた、解決のための介入プランを立てることができるようになる。 ・支援者としてコンプリメント、ワンダウンなど、支援に必要な臨床的態度・姿勢を理解し、具現化することができるようになる。 ・親ー子、両親(夫婦)、きょうだいなど、家族内の二者のサブシステム間のコミュニケーションの相互作用をトラッキングを使って聴き取り、トラッキング・データの形にすることができるようになる。 |
授業計画 | 第1回 | オリエンテーション この授業についてシラバスを使って説明する。また授業を始めるにあたって、自分と他者の相互作用による現実生成過程について解説し、対人支援の基盤となる問題の生成と解決の生成のメカニズムについてのイメージを持ってもらいたいと考えている。その上で、それぞれの「子ども観」「家族観」「支援観」についてディスカッションしたいと考えている。 |
第2回 | 子どもの発達と家族のライフサイクル 家族の誕生と推移を子どもの発達課題とからめながら理解していく。 また「子どもの誕生」や「子育て」という出来事が、家族構成員にとってどのようなライフイベントとなるのか、ストレスという視点から考えていく。 |
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第3回 | 子育て家族をとりまく環境の理解(1)家族の機能 家族の機能については、従来よりさまざまなモデルが提示されているが、この時間ではパーソンズの挙げた9つの機能について、現代社会の種々の調査統計データから検証し、子どもや家族の生活への影響や変化について押さえていきたい。 |
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第4回 | 子育て家族をとりまく環境の理解(2)関係領域と支援制度・サービス 近年日本では少子化対策や子育て支援と銘打って、児童福祉の保育・療育だけでなく、母子保健・医療・教育・労働政策の中で様々な制度・サービスが整えられている。この時間では、子育て家庭のニーズと既存の制度・サービスの組み合わせについて考察する。さらに前回の学習内容と合わせて、実際の「支援」に役に立つこと、必要なことは何か理解を深めたい。 |
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第5回 | システム理論的家族療法について(教科書参照:はじめに、1章、2章) 家族をシステムとして捉え、家族システム間の相互作用が子どもの成長・発達を促進する方向で機能するよう支援するシステム理論的家族療法について、特徴的な理論的枠組みを解説する。 特に、子どもや保護者が他者とのコミュニケーションによって、何をどう捉えるかの意味づけのルールや、どう行動するかの行為選択のルールを絶えず生成し、現実に対処していっているという「二者間の現実生成システム」の理解は子ども家庭支援論全体に関わるものなので、この後の学習も通して肉付けしていきたい。 |
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第6回 | システム理論的家族療法の認識論(1)(教科書:3章) 社会や家族の捉え方、問題や現象の捉え方に関わる理論として、システム理論、円環的認識論、第一次変化・第二次変化について解説する。これらの認識論は、家族システムだけでなく社会システムの構造や力動性の理解の土台であり、対人関係におけるメッセージの相互作用(コミュニケーション)の分析には欠かせない理論である。 |
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第7回 | システム理論的家族療法の認識論(2)(教科書:3章、4章) 人間のコミュニケーションの理解に欠かせない認識論として、語用論、ダブルバインド理論、コミュニケーションの暫定的公理、社会構成主義について解説する。これらの認識論は、問題を実在するものとしてではなく、本人や家族と環境との間で相互に構成されるものであると理解し、構成のメカニズムを変容させることで解決をはかるファミリーソーシャルワークの理論的土台となるものである。 |
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第8回 | 支援者の臨床的態度と考え方(教科書:5章) 自他のコミュニケーション・システムが人間関係を作り、人間関係がメッセージの意味づけの文脈となることを学んだ第6回、第7回の学習内容から、支援者と被支援者の二者システムをどのように機能させていくかを、支援者の臨床的態度として言語・非言語メッセージから考えていく。具体的な方法としてジョイニング、コンプリメントについて解説する。 |
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第9回 | 家族構造の分析方法(教科書:6章、9章) 家族システムを構造から家族の置かれた状態や家族メンバーの意味づけや行為選択のルールに関する理解・分析する方法を学ぶ。親子、両親(夫婦)、きょうだいのサブシステムとその関係性の理解と分析、ジェノグラムによる家族構成と家族内役割の理解と分析、エコマップによる家族と社会との関わりの理解と分析から、多角的・重層的にクライアントの状況をアセスメントし、問題とされる状況の背景を考察できるようにしていきたい。 |
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第10回 | システム理論的家族療法の方法論(教科書:7章、11章) ファミリーソーシャルワークの実践的技法として、リフレイミング、ポジティブコノテーション、ソリューションフォーカスアプローチの理論と質問法、トラッキング、外在化について学ぶ。 それぞれの技法を実際に使うロールプレイによる演習を行う予定にしている。 |
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第11回 | ファミリーソーシャルワークの手順(1)分析、仮説だて、介入プランの検討 この回と次の回では、子育てに悩む母親の事例を使って、ファミリーソーシャルワークの手順を体験する。この回では、得られた情報を整理、分析し、現象についての仮説を立て、どのように介入していくかを自分たちで考えるところまでを予定している。 |
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第12回 | ファミリーソーシャルワークの手順(2)介入、ロールプレイ発表 前回立てた介入プランをもとに、実際にロールプレイを行う。各グループで練習ののち、全体での発表を行い、ふり返りを行う予定にしている。 |
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第13回 | 事例検討(1)障害・疾病に関わる家族支援、虐待に関わる家族支援 家族支援で取り扱うことになりやすいテーマに対して、この回と次の回で考えたい。まず、ケアが特に必要な子どもの場合について、障害、病気、虐待というテーマから考えていく。障害特性や病気の症状が家族の中でどのように取り扱われるか、家族間にどのようなパターンを生むか、資料を見ながら考察し、支援について意見交換を行う。また虐待事例については、家族の関係性、家族間の相互作用パターンの考察から、支援者がどのような態度や具体的な言語・非言語メッセージを採用し、支援にあたるか意見交換を行う。 |
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第14回 | 事例検討(2)児童期の家族支援、思春期・青年期の家族支援 この回では、入学、進学、進路、クラス替えや転校など、学校や教育との絡みで生じる問題や、反抗期、不良行為、友人・先輩後輩などの対人関係面でのトラブル、恋愛、性自認、部活や勉強などでの挫折など、子どもの成長・発達に伴って、家族のこれまでの見方や考え方、行動の仕方に変容を迫る問題について、理解や対応方法を考えていきたい。 |
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第15回 | 子ども家庭支援従事者に求められるものとは これまでの学習内容をふまえ、改めて子ども家庭支援の意義や必要性、従事者がどのような専門性を身に着ける必要があるか、一人ひとりの考える家族支援論についてディスカッションしたい。 |
授業外学習の課題 | ・教科書を使用します。授業で指定された範囲は事前学習として読んできてください(2時間程度)。授業で指定されていないところも家族支援方法論の理解が深まる内容となっています。繰り返し読んでいただきたいと思っています。 ・事後学習として課題を提示します。(学習時間の目安としては通常は1時間程度を想定していますが、調べたり、考えたりするものは1時間以上かかるかと思います。時間的に難しいことがあれば相談してください。) ・教科書以外の参考文献や統計資料なども目を通していきましょう。(教科書にも参考文献が示されています。) ・子どもや家庭、家族に関連するニュースや、地域の支援機関など、興味関心を持ってください。気になったことや勉強になったことは、教えてください。情報交換して知識を広めましょう。 |
履修上の注意事項 | ・第1回の授業で、確認事項について説明するので、出席するようにしてください。 ・「社会福祉論」を受講していると基礎理論の理解が容易になるかと思います。 ・原則、対面授業を行います。 ・子どもや家族を支援する専門職としての態度や姿勢を求めます。 ・この授業では、実際的な家族支援論を中心とします。子育て支援制度や支援機関については「児童家庭福祉論」、子どもの福祉と社会状況との関連については「社会福祉論」でも学ぶことができます。またこの授業で学習した内容は「社会的養護論」で児童福祉施設での支援を考える時にも役立ちます。 ・授業では皆さんに問いかけ、考えてもらうことを意識しています。思っていることや考えていることを言語化するのは容易ではありませんが、授業を練習の場だと思って、意見を出してください。また、グループワークやディスカッションの際には、自分の言動が目の前の人の学習にも作用することを踏まえ、友好的・協力的なコミュニケーションを意識してください。 ・授業中の私語など受講マナーについては、大学の規定に準拠します。 ・欠席については、理由の有無、内容にかかわらず、6回以上欠席した学生は評価の対象にしません。 ※公認欠席の取り扱いについて ・公認欠席は欠席として扱いますが、単位認定要件または期末試験の受験要件には影響しないよう配慮します。 ・公認欠席時の資料は後日配付します。申し出てください。 ・小テストやプレゼンテーション時に公認欠席となる場合、追試または代替措置で対応します。 ・遅刻、早退、欠席の報告・連絡・相談、課題の内容や提出日時に関する疑問や相談、学習に必要な配慮などは、自己判断せず、口頭またはメールなどで伝えてください。こちらも授業内容や方法の変更などはなるべく事前に連絡したり、相談したりするようにします。互いに信頼し合えるような行動をとっていきましょう。(メール:mnaka@alpha.shudo-u.ac.jp) |
成績評価の方法・基準 | 成績は、平常点の評価と期末試験の評価により総合的に行います。 平常点の評価(40%) ・授業内のワークシート、理解確認の小テスト、リアクションペーパー、提出課題 ・欠席での減点はありませんが、私語など授業マナー違反については減点の対象とします。 ※評価のポイント ・提出期限を守れているか(連絡や相談なく提出期限を過ぎた課題は受け取りません。) ・設問に対応しているか ・講義内容の理解度、独創的な意見・感想、根拠のある適切な批判、着想の鋭い質問など、記述の内容 期末試験の評価(60%) ・試験前に試験範囲や持ち込み資料について説明します。 ※評価のポイント ・問題の理解 ・説明の根拠、説得力 ・論理的な論述構成、授業内容の反映・応用の有無 ・文章力(文章表現、誤字脱字など) ・資料の取り扱い(引用、参考の明示の仕方) |
テキスト | 『はじめての家族療法 クライエントとその関係者を支援するすべての人へ』浅井伸彦編著 北大路書房 2021年 ISBN978-4-7628-3165-2 |
参考文献 | <理論や実践事例について> ・『保育ソーシャルワーク論 社会福祉専門職としてのアイデンティティ』鶴宏史著 あいり出版 2009年 ・『システムズアプローチ入門 人間関係を扱うアプローチのコミュニケ―ションの読み解き方』中野真也・吉川悟著 ナカニシヤ出版 2017年 ・『対人援助のための家族理解入門-家族の構造理論を活かす』団士郎著 中央法規出版 2013年 ・『ファミリー・ソーシャルワークの理論と技法 社会構成主義的観点から』大下由美・小川全夫・加茂陽編 九州大学出版会 2014年 ・『人間コミュニケーションの語用論』P・ワツラウィック他 尾川丈一訳 二弊社 1998年 ・『学校におけるブリーフセラピー』宮田敬一編 金剛出版 1998年 ※その他、システムズアプローチや家族療法に関連した書籍はテキストでも紹介されています。 <社会、制度・サービスについて> ・『15歳からの社会保障 人生のピンチに備えて知っておこう』横山北斗著 日本評論社 2022年 ・『子供の貧困が日本を滅ぼす 社会的損失40兆円の衝撃』日本財団子どもの貧困対策チーム 文藝春秋 2016年 ・『子どもたちの階級闘争』ブレイディみかこ みすず書房 2017年 ※子どもや子育て家庭を支援する社会資源については、内閣府や厚生労働省のホームページ、または広島市や広島県の子育て支援サイトなどから情報をえることができます。 |
主な関連科目 | 社会福祉論、児童家庭福祉論、社会的養護論 |
オフィスアワー及び 質問・相談への対応 |
・授業時間の前後に教室で対応します。ただ、毎回十分な時間が必ず取れるとは限らないので、事前にメール(mnaka@alpha.shudo-u.ac.jp)でお知らせいただいたり、相談の上、日時を調整させていただけると助かります。 ・リアクションペーパー、課題のフィードバックは、対面では返却時に、非対面ではMoodleのフィードバックで行います。 ・リアクションペーパーに書かれた質問には、次回の授業の冒頭で回答するか、内容に応じて個別に回答いたします。 |
URLリンク | 結婚と家族をめぐる基礎データ(令和3年内閣府) |
URLリンク | 統計調査(こども家庭庁) |
所属 | ナンバリングコード | 適用入学年度 | 配当年次 | 身につく能力 | ||||
知識・技能 | 思考力 | 判断力 | 表現力 | 協創力 | ||||
人文学部教育学科(資格関連科目) | - | 2019~2022 | 3・4 | - | - | - | - | - |
人文学部教育学科(資格関連科目) | - | 2023~2023 | 3・4 | ○ | ○ | - | ○ | - |