授業コード 70004900 クラス
科目名 政治と社会(中東) 単位数 2
担当者 船津 靖 履修期 後期授業
カリキュラム *下表参考 配当年次 *下表参考

授業題目 中東紛争のリアリズムと日米外交 Realism in the Middle East Conflict and the U.S., Japanese Foreign Policy
授業の概要 中東は人類の文明発祥の地。ピラミッドや聖地エルサレムなど古代のロマンがいっぱいだ。だが今も「王様」や宗教指導者、軍司令官が人々の生死を含む運命を翻弄する。テロや暗殺は日常茶飯事、スパイが暗躍し、特殊部隊が突入し、奇襲攻撃で戦争が始まる。映画のようだが、それが現実だ。国際政治のリアリズム(現実主義)の理論が最もよく当てはまる地域と言われる。
 日本はエネルギー資源の大半を中東に依存している。日本の「赤軍派」はレバノンを拠点に活動した。イスラム過激派による日本人殺害も起きた。日本の同盟国アメリカは聖書の絆などからユダヤ国家イスラエルと「特別な関係」にある。11月の米大統領選挙の結果が中東に大きく影響する。
 軍事と宗教は日本人が国際関係を見るとき最も理解が難しい分野。中東の現実を知ることは国際政治のリアリズムを知るのに有益だ。日本が位置する東アジアの地政学もリアリズムの分析を必要としている。アメリカの中東外交、特にイスラエル・パレスチナ紛争に力点を置く。教材に若干の英語を含む。  
【実務経験】
 1994~97年共同通信エルサレム支局長。占領地ヨルダン川西岸とガザ地区、米仲介の中東和平交渉、反和平派イスラム主義組織ハマスの自爆テロ、ユダヤ教極右のラビン首相暗殺事件などを取材。2000~04年ロンドン特派員。イラク戦争前後のバグダッド、ベイルート、エルサレムへ半年ほど出張取材。外信部中東部会長として中東全体の特派員の指揮、出稿を統括。著書に『パレスチナ 聖地の紛争』(中公新書)
学習の到達目標  ディプロマポリシーが掲げるThink Globally、世界の諸問題への知識、国際社会の多様性とダイナミズムを理解する能力を中東を素材に養うのが到達目標。①中東の地理、対立の構図、歴史について基礎的な理解ができるようになる、②原油をはじめ日本にとって意外に身近な地域であることが理解できるようになる、③軍事や宗教の国際関係における大きな役割が理解できるようになる、④日本の同盟国アメリカにとって重要な地域であること、イスラエルとの「特別な関係」が理解できるようになる。
授業計画 第1回 中東NOW①: 民族・主要国
 アラブ、ユダヤ、ペルシャ、トルコの4民族と中東の大国の地理、首都、経済のイメージを持てる。
第2回 中東NOW②: アメリカとイスラエル、イラン、サウジアラビア
 アメリカと3地域大国の関係を軸に現代中東の国際関係、地政学の概要を理解できるようになる。
第3回 聖地エルサレム: シオニズムとパレスチナ
 パレスチナへのユダヤ民族主義者シオニストの入植でアラブ人との衝突が起きた歴史を理解できる。
第4回 第一次中東戦争: イスラエル建国とパレスチナ難民(1948年)
 国連パレスチナ分割決議から第一次中東戦争の停戦までの略史を理解できる。
第5回 第二次中東戦争: スエズ動乱(シナイ戦争、1956年)
 エジプトと英仏イスラエルの対立と背景にある仏イスラエル極秘核兵器開発計画を知る。
第6回 第三次中東戦争: エジプトの挑発、イスラエルの軍事占領拡大(1967年)
 東エルサレム、西岸、ガザ、シナイ半島、ゴラン高原をイスラエルが占領地とする歴史を知る。
第7回 PLO:「日本赤軍」の空港乱射と「黒い九月」のミュンヘン五輪村襲撃(1972年)
 日本人とパレスチナ人の過激派による観光客や五輪選手へのロ事件を理解できるようになる。
第8回 第四次中東戦争~シーア派台頭: 奇襲戦争からイスラム革命まで(1973-79年)
 エジプトの奇襲攻撃、石油ショック、和平合意、イラン革命までの70年代を理解できるようになる
第9回 ペルシャ湾岸危機・戦争:冷戦後の国際安全保障と日本の孤立(1990-91年)
 イラクのクウェート侵攻への欧米・アラブ共同の軍事制裁と日本の一国平和主義の限界を学ぶ
第10回 オスロ合意と自爆テロ: 米仲介の和平交渉、反和平派ハマス、ラビン首相暗殺(1973-2000年)
 イスラエルとPLOの歴史的和解、双方の反和平宗教右派のテロや暗殺で揺れた中東の90年代を学ぶ
第11回 9.11米同時テロ: 和平の挫折、アフガン・イラク戦争(2001-03年)
 中東和平交渉失敗と国際テロ組織アルカイダのテロによるアメリカの「対テロ」戦争を知る
第12回 オバマとネタニヤフ:、入植地、核問題、アラブの春、「イスラム国」、プーチン(2009-17)
 米の中東撤退政策に伴うアラブ諸国の混乱やスンニ派とシーア派の対立、ロシアの介入を学ぶ
第13回 トランプの親イスラエル政策: 米大使館エルサレム移転とアブラハム合意(2017-20年)
 国際法とパレスチナを軽視した外交によるイスラエルとサウジ・湾岸アラブ諸国の接近を学ぶ
第14回 イスラエル・ハマス戦争: 親イラン組織と米イスラエルの衝突(2023-24年)
 ハマスのテロ攻撃、イスラエルのガザ戦争、ヒズボラやフーシ派の介入など中東の激変を学ぶ
第15回 米新政権の中東政策: 米イスラエル「特別な関係」とサウジ、イラン、パレスチナ(2025-)
 アメリカの新大統領の中東政策について多角的に分析できるようになる
授業外学習の課題 事前学修(1時間程度)Moodleに掲載したレジュメや資料・記事にざっと目を通す。地図をよく見る。中東関係のニュース記事や報道番組を見る。英語を予習する必要はない。
事後学修(2時間程度)授業中にメモしたノートやMoodleの資料を固有名詞、キーワード、英語を中心に復習する。
 共通の情報インフラとしてNHKのニュース防災アプリhttps://www3.nhk.or.jp/news/(無料)の中東とアメリカ、日本外交に関するニュースを使用する。日本経済新聞(電子版含む)はじめ全国紙や中国新聞の国際面や経済面の中東アメリカ関連ニュースに目配りする。
履修上の注意事項  質問を歓迎する。質疑応答でコミュニケーションが図れる。中東の地図と親しむことが重要。専用ノートを準備し講義の内容をメモする。自分で調べたことを補足していく。大きなニュースが飛び込めばシラバスを変更する。勉強も仕事も忘却との闘い。各自工夫を。欠席や遅刻の多い学生は歓迎しない。公認欠席は欠席とカウントしない。私語は迷惑。出席登録は厳正に。不正行為には厳しく対処する。
 中東は複雑だが面白い、と楽しめる向学心のある学生の受講を歓迎する。
 公認欠席は欠席として扱うが、単位認定要件や期末試験の受験要件には影響しないように配慮する。公認欠席時にMoodle掲載以外の資料があれば後日配布する。
成績評価の方法・基準 受講状況約20% 期末試験約80% 期末試験の受験は原則として10回以上の出席が条件だが、個別の事情には柔軟に配慮する。事前に相談を。追試はしない。軽くはないレポートで代替する。事前の相談が必要。
テキスト レジュメと関連資料をMoodleに掲載する。
参考文献  船津靖『パレスチナ 聖地の紛争』(中公新書、2011年)電子版、\902ジョセフ・ナイ他著『理論と歴史 国際紛争』(有斐閣)。『2023年版 世界地図』(成美堂出版)
 ボブ・ウッドワード記者の『ブッシュの戦争』『攻撃計画』、パトリック・コバーン著『イラク占領』など随時紹介する。広島修道大学リポジトリ『修道法学』に船津靖「米大使館エルサレム移転と福音派の黙示的終末論」「聖地エルサレムの地位と神殿の丘/聖域」「イスラエル右派ベギン首相の核ドクトリンと米福音派レーガン大統領のシオニズム」「イスラエルによりシリア北朝鮮製原子炉空爆と報道管制」「イスラエルの核不透明政策とケネディ~ニクソン政権」
主な関連科目  政治と社会(アメリカ)、国際ジャーナリズム論、異文化理解論【宗教社会学】
オフィスアワー及び
質問・相談への対応
 授業中またはMoodleの課題での質問や感想を歓迎し評価する。勉強法や進路などの相談はメール(funatsu@shudo-u.ac.jp)や個人面談で。期末試験についてはMoodle上に講評を掲載する。

■カリキュラム情報
所属 ナンバリングコード 適用入学年度 配当年次 身につく能力
知識・技能 思考力 判断力 表現力 協創力
国際コミュニティ学部国際政治学科(地域研究領域) FGGP30502 2018~2022 3・4 - - - - -
国際コミュニティ学部国際政治学科(地域研究領域) 2023~2023 3・4 - - - - -
国際コミュニティ学部地域行政学科(政治領域) FGRA30312 2018~2022 3・4 - - - - -