授業コード 84000200 クラス
科目名 児童家庭福祉論 単位数 2
担当者 福岡 律子 履修期 前期授業
カリキュラム *下表参考 配当年次 *下表参考

授業題目 児童家庭福祉   Child and family welfare
授業の概要  現在子どもの福祉に関しては、従来の特定の子どもを対象とした保護的な「児童福祉」の概念から、すべての子どもと子どもを含めた子育て家庭・子育て環境を対象とし、子どもの最善の利益を目指す積極的な「児童家庭福祉」へと発展している。こうした社会の要請を受け、子どもや子どもを育てる家庭を対象とする対人支援の専門職は、それぞれの子どもや家庭の個別理解から、社会の動静、福祉・教育・保健・医療サービスの知識など、幅広い専門性を求められている。加えて、そうした理解や知識を的確な方法で、効果的に実践に活かす支援的なコミュニケーションも必要とされている。
 本講義では、児童家庭福祉の概念や制度の歴史的な変遷、現在重視されている基本的理念、整備されている関連制度の内容について学び、児童家庭福祉の意義について理解を深める。また、事例を題材に、子どもや家庭にどのようなことが起こるのか、どんなサービスを使って、どのように支援できるのか、エコロジカルな視点から実際の支援方法を考えていく。
 学習方法は、原則対面授業で行う。質疑応答、ディスカッション、グループワークを用い、学習内容の理解を深めるだけでなく、個別の対人支援に必要なコミュニケーション・スキル、チーム支援や他機関連携に必要なコミュニケーション・スキルの習得も図っていきたいと考えている。
学習の到達目標 ・児童家庭福祉の歴史的変遷、基本的理念を知り、現代社会における児童家庭福祉の意義を理解する。
・現在の法制度、実施体制、各種サービスの内容と利用方法についての基本的知識を得る。
・個別のケースの理解と支援方法について考察できるようになる。
・他者と協力して対人支援を行うためのコミュニケーションについて要点をつかみ、実行することができる。
授業計画 第1回 オリエンテーション
 授業の概要、進め方、試験、評価、その他確認事項について説明する。また授業内で意識する対人支援に必要なコミュニケーションについて、ポイントを説明する。自分自身が子どもや子育てに対して、どんなことに関心を寄せているのか改めて考えるワークや自己紹介を行う。
第2回 児童家庭福祉の歴史的変遷(1)
 主にイギリスの福祉制度を基に児童や児童福祉の概念の変遷を学ぶ。社会の出来事や情勢、生じた問題と、子どもや子育て、家族の在り方、制度政策との関連を考える。
第3回 児童家庭福祉の歴史的変遷(2)
 主に日本の児童家庭福祉の歴史を追いながら、現在の児童家庭福祉が先人たちの努力と工夫によって土台が作られ、人権意識や社会状況の変化に伴い、すべての子どもと子育て家庭を包括するものにまで発展していることを理解する。
第4回 子どもの権利条約
 児童家庭福祉の基本理念として、子どもの権利条約について学び、実際の子どもとの関りや支援、家庭の日常生活場面での具現化について考える。
第5回 現代社会と子育て
 現代社会で子どもが育つということ、子どもを育てるということを様々な資料を基に多角的に考察し、子どもや子育て家庭の福祉と地域社会との関連性を理解する。その上で、児童厚生施設の概要、意義について学ぶ。
第6回 児童家庭福祉の関連法制度(1)
 子どもや子育て家庭を支援する法制度について学び、基本的な福祉サービスの内容と利用について知識を得る。
第7回 児童家庭福祉の関連法制度(2)
 子どもの権利条約に批准以降、整備された法制度について、内容と課題について学ぶ。
第8回 児童家庭福祉の実施機関(1)
 児童相談所の機能と現状、課題について学ぶ。
第9回 児童家庭福祉の実施機関(2)
 児童相談所以外の支援機関について学ぶ。それらの機関と児童相談所が実際どのように連携し、支援を行っているのか、事例を通して学ぶ。
第10回 乳幼児期の支援
 妊産婦の支援ニーズと社会の理解、乳幼児期の育児不安、男性の育児参加など母子保健分野の基本的な知識を学ぶ。特に虐待予防の観点から、この時期にどのようなリスクがあり、どのような支援や取り組みが必要なのかを理解する。
第11回 社会的養護について(1)
 社会的養護の概要について学び、現在の日本の社会的養護の状況、特徴、課題を理解する。
第12回 社会的養護について(2)
 児童養護施設の実践記録をもとに、入所児童に対するアセスメント、支援計画、支援の方法や実施の様子を学ぶ。
第13回 障害のある子どもに対する児童家庭福祉
 特別支援についての基本的な知識を得る。厚労省が提唱する「縦の連携」「横の連携」に関連した制度を学び、事例を通して理解を深める。
第14回 問題行動に対する児童家庭福祉
 非行問題について基本的な知識を得た上で、少年法と児童福祉法による対応の違いを理解する。非行問題を起こした子どもやその家族に対する支援について考察する。
第15回 児童家庭福祉実践の担い手 専門職について
 児童家庭福祉に関連する専門職について基本的な知識を得る。また求められる専門性について、自分自身の職業倫理が確立できるよう学ぶ。
授業外学習の課題  事前学習としては、①ニュースを見る、②本・論文・漫画・映画・インターネットなどで知識を拡げる、③授業で紹介する資料や参考文献を読む、ようにしてください。事後学習としては、①授業内容をふり返ってまとめる、授業で知ったことや考えたことを家族や友だちと話す、②ふり返りの中で思ったこと・気づいたことをメモする、リアクションペーパーに書く、③授業内容と関連させて、ふだんの生活環境を見直す、ようにしてください。
履修上の注意事項 ・子どもや保護者を支援する専門職としての態度や姿勢を求めます。
・授業では皆さんに向け問いかけ、考えてもらうことを意識しています。思ったことや考えていることを他人に伝わるように言語化するのは簡単ではありませんし、ましてやTPOに合わせて内容や表現を工夫するのは至難の業です。だからこそ、試行錯誤を繰り返すことがスキルの習得に役立つと考えるからです。授業を練習の場だと思って、自分なりの考えや経験知などを意見として表明してください。
・多様な価値観を学びます。自分の人生経験や生活環境とは全く違う状況や、想像するのさえ難しい内容もあると思いますが、授業で紹介する様々な話や他の人の意見に興味関心を持ってください。
・子どもや家族支援に必要なコミュニケーションを学びます。児童家庭福祉の実践には他者との友好的で協力的なコミュニケーションが欠かせません。ことば選びや言い方の工夫、非言語メッセージのコントロールなど、事例を取り扱う時には実際自分がやるとしたら…と常にイメージするようにしましょう。
・遅刻、早退、欠席の報告・連絡・相談、課題の内容や提出日時に関する疑問や相談、学習に必要な配慮などは、自己判断せずに口頭・メールなどで伝えてください。こちらも授業内容や方法の変更などはなるべく事前に連絡したり、相談したりするようにします。
成績評価の方法・基準 リアクションペーパー(30)、授業への取り組み(30)、レポート課題(40)による平常点の評価と、期末試験(100)の成績により、総合的に評価します。課題、リアクションペーパーについては、提出期限が守れているか、設問に対応しているか、提出されたものの内容により評価します。
テキスト 必要に応じて紹介します。
参考文献 <制度・サービスや支援機関のWeb資料>
・厚生労働省ホームページ→テーマ別に探す→子ども・子育て
・内閣府ホームページ→内閣府の政策→子ども・子育てし得→子ども・子育て本部
・広島市ホームページ→子育て・教育
・広島県の子育てポータルサイト「イクちゃんネット」
・ユニセフホームページ:子どもの権利条約
・認定NPO Living in Peace ホームページ→取り組む課題
・認定NPO児童虐待防止全国ネットワークホームページ:オレンジリボン運動
・文部科学省ホームページ→教育カテゴリートピック
・日本財団ハッピーゆりかごプロジェクトホームページ
・世界の子どもを児童労働から守るNGO ACE ホームページ:児童労働とは
・国際NGOヒューマン・ライツ・ウォッチ→報告書「夢が持てない」
・認定NPOフローレンスの赤ちゃん縁組 ホームページ
など
<テキスト的な書籍>
・「新版子ども家庭福祉」山田勝美・艮香織編著 建帛社
・「生活事例からはじめる 児童家庭福祉」吉田眞理著 青鞜社
・「児童の福祉を支える児童家庭福祉」吉田眞理 萌分書林
・「子どもと家庭の福祉を学ぶ」松本園子・堀口美智子・森和子著 ななみ書房
・「子ども家庭福祉論」柏女霊峰著 誠信書房
・「エッセンシャル子ども家庭福祉論」千葉茂明編 株式会社みらい
・「家庭支援論」中野由美子編著 一藝社
・「被虐待児童への支援論を学ぶ人のために」加茂陽編 世界思想社
・「ファミリー・ソーシャルワークの理論と技法」大下由美・小川全夫・加茂陽編 九州大学出版会
など
<知識を拡げるために>
・「家庭と教育 子育て・家庭教育の現在・過去・未来」表真美著 ナカニシヤ出版
・「余暇・遊び・文化の権利と子どもの自由世界」増山均著 青鞜社
・「跳びはねる思考」東田直樹 イースト・ブレス
・「明日の子供たち」有川浩 幻冬舎
・「きみはいい子」中脇初枝 ポブラ文庫
など
その他、授業の中でも紹介していきます。
主な関連科目 社会福祉論 子ども家庭支援論 社会的養護論
オフィスアワー及び
質問・相談への対応
・授業時間の前後に教室で対応します。メールで質問・相談していただいても構いません。
・リアクションペーパー、課題のフィードバックは、返却時に行います。
・リアクションペーパーに書かれた質問には、次回の授業の冒頭で回答するか、内容に応じて個別に回答いたします。

■カリキュラム情報
所属 ナンバリングコード 適用入学年度 配当年次
人文学部教育学科(資格関連科目) 2016~2022 3・4