授業コード 70014600 クラス
科目名 法律特論B(条例の制定と運用の実務) 単位数 2
担当者 川本 達志 履修期 後期授業
カリキュラム *下表参考 配当年次 *下表参考

授業題目 条例の制定と運用の実務  Practice of enactment and operation of local government ordinances
授業の概要  地方自治体の運営上の多くのルール(組織、人事、給与、公の施設の設置及び管理など)は条例により決められている一方、昨今は、地域の課題の解決を法律の運用に任せるだけでなく、地方分権、地方創生の拡大の下で、独自の政策課題の解決のために、条例を制定し課題解決の方法とする例も増えています。
 しかし、自治立法権の具体化である条例制定には、立法事実の確定、行政行為の選択、人的財政的裏付け、法律の制約、憲法との関係で留意すべき事項、罰則規定など、法的に考慮しなければならない課題も多く存在します。
 この講義では、条例制定上考慮しなければならない上記の項目について、実際の条例や判例を中心に理解を深めていきます。
 また、実際の条例制定の現場での経験を現職の市役所担当者から伝えてもらい、現場での政策目標と条例の関係、制定の経緯、具体的な立法事実、仮説と検証、実際の効果などについて学ぶ機会も設けます。

実務経験内容;広島県及び廿日市市(副市長)において、政策立案、条例制定、立法審査、争訟事務に従事
学習の到達目標  地方自治体の政策を実現するための条例の役割を理解したうえで、条例制定の際に留意しなければならない項目について、法的な知識を会得し、具体的な条例を示して説明することができるようにします。加えて、これまでに感じている地域課題について、条例を制定することによって解決する際の留意及び調査の視点を推論できるようにします。
授業計画 第1回 はじめに
①自己紹介(実務経歴など)
②講義の進め方と評価基準について
③地方自治体についての、組織、制度など一般理解
④広島市暴走族追放条例事件から条例を法的に検討する必要性を理解する
第2回 法としての条例の基礎
①憲法の原則(個人の尊厳を最高価値とする権力制限の構造、法の支配とは)
②憲法上の条例の位置づけ
③立法とは(法規説、侵害留保節、重要事項留保説、全部留保説)
④法の強要性
⑤法律適格性
第3回 自治立法…条例制定権と分類
①条例の意義
②規則の意義(長と議会の関係、行政委員会、
③条例制定権(必要的条例事項と任意的条例事項)
④パートナーシップ条例について(立法事実、公の利益と個人の利益の調製、国と地方の役割)
⑤条例の分類(自主条例と法津施行条例、基本(理念)条例と実体的条例
第4回 条例制定改正の手続き
①条例案の提案権(長と議員の役割)
②条例と予算(予算提案権との関係と調整、「再議」とは)
③専決処分による条例制定(「専決処分」とは)
④条例・規則の基本的構造(総則、実体的規定、雑則的規定、罰則規定、附則)
⑤改正条例の実際(改め文方式と新旧対照方式)
第5回 条例と行政処分
①行政処分と条例の関係
②行政処分とは(行政処分の種類、準法律行為的行政処分、附款)
③行政調査と条例
第6回 条例の実効性確保と誘導的手段
①条例の実効性確保(行政指導、行政命令など)
②行政代執行
③条例の罰則
④誘導的手法
中間レポート課題提示 テーマ数 2
第7回 条例の限界
①期間
②地域
③不遡及の原則
④罪刑法定主義
中間レポート課題提示
 2つのテーマについて、それぞれ、課題認識と解釈、提案があれば仮説の提示を記載
第8回 条例と人権

第7回で提出されたレポートの講評
レポートのテーマに沿った課題の整理と解釈
関連テーマ(条例制定権、法律の留保、条例の制定手続など)について振り返り授業
第9回 条例と違憲審査
①二重の基準論の条例制定権(ため池条例)
②三段階審査説と条例制定権
③精神的自由に関する審査基準(LAR、検閲禁止、明確性の理論など)
④法令用語(「及び」、「又は若しくは」の読み方など)
第10回 条例制定権と法律
①条例の分類
②横出し、上乗せ条例に対する判例(徳島市公安条例、高知市普通河川等管理条例、神奈川県臨時特例企業税条例)
③法と条例の関係(基準)、条例と条例の関係
第11回 条例立案の流れ
①立法事実とは
②仕組みの選択
③履行の確保(宝塚市パチンコ店等及びラブホテルの建築の規制に関する条例)
④合憲性、適法性審査
第12回 実例1 法定外目的税条例、法定外普通税条例について
東京都ホテル税及び宮島訪問税
第13回 実例2 情報公開条例
広島市情報公開条例
第14回 実例3 まちづくり条例
廿日市市産業振興基本条例
第15回 まとめ
期末レポートについて
授業外学習の課題 第1回の授業までに、広島市暴走族追放条例事件の判例を読んで疑問に思った点を書きだしておくこと。判決文は添付ファイルにあります。予習学習の目安時間は、1時間です。



第6回の授業終了時に中間レポート課題の提示をしますので、第7回授業終了後に提出してください。レポートに要する学習の目安時間は、4時間です。


最終レポートの提出期限は、1月14日。レポートの課題は、授業で伝えます。学習の目安時間は、6時間です。
履修上の注意事項  具体的な条例・判例を理解することで、条例立案上必要になる知識の概要が身につくよう学習していきます。地方自治全般について興味のある方、将来公務員になりたい方などに興味を持てるような講義にしていきます。
 憲法・地方自治法についてあらかじめ学習されている方が理解しやすいです。ただ、立法上必要な項目は基礎的なところから学びますので、必ずしも事前の履修を要件とするものではありません。

授業各回終了前に、ワークシートを配付します。この提出をもって出席の確認とします。

最終レポートは、授業で学んだテーマの中から、条例の基本的なテーマについて、まとめて整理するものになります。
成績評価の方法・基準 各回のワークシート及び第7回終了後の演習問題レポートで30点
最終レポート70点
テキスト 授業ではパワーポイントの資料を予めメールにて配付します。
参考文献 「憲法の視点から見る条例立案の教科書」(松村享著 第一法規)
「行政法」(宇賀克也 有斐閣)
主な関連科目 憲法原論、行政法、地方自治法
オフィスアワー及び
質問・相談への対応
授業終了後に配布して回収するワークシートにて質問を記載いただき、次回授業までにWebにて回答します。

最終レポートの講評はインターネット上で行うことによりフィードバックを行います。
添付ファイル 広島市暴走族追放条例事件上告審判決.pdf 説明 広島市暴走族追放条例事件上告審判決

■カリキュラム情報
所属 ナンバリングコード 適用入学年度 配当年次
国際コミュニティ学部地域行政学科(法律領域) 2018~2022 3・4