授業コード 70004900 クラス
科目名 政治と社会(中東) 単位数 2
担当者 船津 靖 履修期 後期授業
カリキュラム *下表参考 配当年次 *下表参考

授業題目 中東紛争のリアリズムと日米  Realism in the Middle East Conflict, America and Japan
授業の概要 中東は人類の文明発祥の地。ピラミッドや聖地エルサレムなど古代のロマンがいっぱいだ。だが今も「王様」や宗教指導者、軍司令官が人々の生死を含む運命を翻弄する。テロや暗殺は日常茶飯事、スパイが暗躍し、特殊部隊が突入し、奇襲攻撃で戦争が始まる。映画のようだが、それが現実だ。国際政治のリアリズム(現実主義)の理論が最もよく適応できる地域と言われる。
 日本の同盟国アメリカは聖書の絆などから中東のユダヤ人国家イスラエルと「特別な関係」にある。日本はエネルギー資源の大半を中東から輸入している。日本の「赤軍派」はかつてレバノンを拠点に活動した。近年はイスラム過激派による日本人殺害が起きている。
 軍事と宗教は、現代の日本人が国際関係を見る場合、最も理解が困難な分野だ。中東の現実を知ることは国際政治のリアリズムを知るのにとても有益。ウクライナを侵略したロシアはシリアを事実上、支配している。日本が位置する東アジアの地政学もリアリズムの分析を必要としている。
 シラバスの内容のほか毎回、中東をめぐる最新情勢に触れる。
 教材や課題に英語の語彙や英文を含む。受講生の大半は英文を読むのに意欲的だ。パレスチナ難民キャンプの中・高校生でも英語を読み、話している。学生の質問に答えることに時間を割きたい。現地の経験や写真を時間の許す範囲で紹介したい。  
【実務経験】
 1994~97年共同通信社のエルサレム支局長として占領地ヨルダン川西岸とガザ地区、クリントン米大統領仲介の中東和平交渉、和平に反対するイスラム主義組織ハマスの自爆テロ、ユダヤ教極右のラビン首相暗殺などを取材。2000~04年ロンドン特派員としてバグダッド、ベイルート、エルサレムなどへ計半年ほど出張取材。帰国後は外信部中東部会長として中東地域全体の特派員の指揮、出稿を統括。
学習の到達目標  中東の地理、対立の構図、歴史的背景などの基礎知識を身に着けられるようになる。日本にとって以外に身近な地域であることが理解できるようになる。
 軍事や宗教の国際関係における大きな役割が理解できるようになる。
 国際政治のリアリズムがリベラリズム(自由、人権、法の支配、国際協調)を守るためにも必要であることが理解できるようになる。
 日本の同盟国アメリカとイスラエルの「特別な関係」が中東やアメリカはじめ国際政治に与える影響を理解できるようになる。
授業計画 第1回 中東NOW、聖地エルサレム、中東と日本
第2回 イスラームとアラブ・ナショナリズム
第3回 シオニズム、ホロコースト、ユダヤ難民、国連分割決議
第4回 1948年(第1次)中東戦争 米ソのイスラエル建国承認、パレスチナ難民、
第5回 1956年(第2次)中東戦争(スエズ動乱)と冷戦、核極秘開発
第6回 1967年(第3次)中東戦争と軍事占領、核兵器保有
第7回 1972年「日本赤軍」乱射事件とミュンヘン五輪村襲撃事件
第8回 1973年(第4次)中東戦争の奇襲攻撃と石油ショック
第9回 1979年エジプト・イスラエル平和条約、イラン・イスラーム革命
第10回 1990-91年ペルシャ湾岸危機・戦争と日本の一国平和主義
第11回 1993-2000年中東和平交渉、自爆テロ、首相暗殺
第12回 2001-03年9.11同時テロとアフガン・イラク戦争
第13回 2009-16年オバマ政権とイラン核問題、「イスラム国」
第14回 2017-20年トランプ政権の親イスラエル外交
第15回 まとめ
授業外学習の課題  授業で扱える範囲は限られている。レジュメや資料を授業中にすべて解説することはできない。次週までに自分で読み通すこと。英文を予習する必要はない。授業の重要語句の記憶、英語のボキャビル、感想・考察などをMoodeの課題で出すことがある。共通の情報インフラとしてNHKのニュース防災アプリhttps://www3.nhk.or.jp/news/(無料)の中東とアメリカ、日本外交に関するニュースを使用する。日本経済新聞(電子版含む)はじめ全国紙や中国新聞の国際面や経済面の中東、アメリカ関連ニュースに目配りすること。15分でも主要記事をかなり読める。
履修上の注意事項  教室で対面授業を実施する。感染予防に引き続き注意する。
 中東の地図と親しむ。
 専用のノートを準備し講義の内容をメモする。自分で調べたこと、考えたことを補足していく。勉強も仕事も忘却との闘い。
 コロナ禍の過去2年間と異なり、授業中のリアクションペーパーを利用することで、Moodleの課題(宿題)を減ら可能性はある。
 欠席や遅刻の多い学生は歓迎しない。私語は迷惑。
 中東は複雑だが面白い、と楽しめる向学心のある学生の受講を歓迎する。
 大きなニュースが飛び込めばシラバスを変更する。
成績評価の方法・基準 受講状況30%、期末試験70% 課題の提出状況や内容、授業への貢献も対象。試験が実施できない場合はレポートに変更する。その場合、配点の割合を変更する可能性がある。期末試験の受験やレポート提出は原則として10回以上の出席が条件だが、個別の事情には柔軟に配慮する。論述は英語も可。方法・基準を変更する場合は速やかに通知する。
テキスト 裏表2頁(40字×30行を4頁)程度のレジュメをできるだけ配布する。レジュメと関連資料をMoodleに掲載する。
参考文献  船津靖『パレスチナ 聖地の紛争』(中公新書、2011年)電子版、\902ジョセフ・ナイ他著『理論と歴史 国際紛争』(有斐閣)。『2021年版 世界地図』(成美堂出版)
 ボブ・ウッドワード記者の『ブッシュの戦争』『攻撃計画』、パトリック・コバーン著『イラク占領』など随時紹介する。広島修道大学リポジトリ『修道法学』に船津靖「米大使館エルサレム移転と福音派の黙示的終末論」「聖地エルサレムの地位と神殿の丘/聖域」「イスラエル右派ベギン首相の核ドクトリンと米福音派レーガン大統領のシオニズム」「イスラエルによりシリア北朝鮮製原子炉空爆と報道管制」「イスラエルの核不透明政策とケネディ~ニクソン政権」
主な関連科目  政治と社会(アメリカ)、国際ジャーナリズム論
オフィスアワー及び
質問・相談への対応
 授業中の質問を歓迎する。授業終了後できるだけ質問や相談に応じる。事務的な確認や個人的相談などはメール(funatsu@shudo-u.ac.jp)でも対応する。課題の内容にはMoodleやメールで個別にも対応する。期末試験やレポートについてはMoodle上に講評を掲載する。レポートの場合、学生から求めがあれば個別に批評を伝える。

■カリキュラム情報
所属 ナンバリングコード 適用入学年度 配当年次
国際コミュニティ学部国際政治学科(地域研究領域) FGGP30502 2018~2022 3・4
国際コミュニティ学部地域行政学科(政治領域) FGRA30312 2018~2022 3・4