授業コード 50012400 クラス
科目名 現代環境思想 単位数 2
担当者 宮川 卓也 履修期 後期授業
カリキュラム *下表参考 配当年次 *下表参考

授業題目 環境思想の形成 Formation of Environmental Thoughts
授業の概要 本講義は、現代社会に生きる私たちが拠って立つ自然観・環境思想が形作られた歴史をたどりつつ、現代の環境思想が何を、なぜ問題としているのかを考え、その上でそれらがどのような思想内容なのか理解することを目的とする。
20世紀後半以降、「環境問題」の深刻さについての認識が深まるにともない、自然環境や生態系に関する多くの研究・見解・理論・思想が発表されてきた。そうした研究や思想は、多様な見解を含みつつも、基本的に近代(19世紀)以降の物質文明や産業発展主義、経済成長主義を批判的に検討している点で共通しているといえる。代表的なものとしてディープ・エコロジーなどを挙げることができるが、生態系に対する見方を広く深くすることを強調するこの思潮も、やはりその根底には近代文明の危うさに対する批判を念頭に置いている。
ところで、そもそもその批判対象とされる近代以降の自然観はどのようにして築かれてきたのだろうか?近年の環境思想や理論は、近現代の自然観の何を、なぜ、どのように批判しており、また新しく提唱しているのだろうか?
本講義は現代環境問題を念頭に置きつつ、古代から様々に変遷を遂げてきた環境思想・自然観の系譜を辿りながらその根本的淵源を探り、現代環境思想が射程に据えている問題を理解することを目指す。
学習の到達目標 本講義は環境に関する様々な思想や考え方の歴史的展開を広く学ぶことで、(1) 環境問題に対する思想的アプローチの多様性とその内容を理解し、その上で、(2) 環境問題に対する自身の考えを形作りつつ、現代文明のあり方や人間の生き方を批判的に考察できるようになることを目標とする。
授業計画 第1回 イントロダクション:環境思想とは何か? なぜ「思想」を論じる必要があるのか? 本講義の問題意識、進め方や評価方法を説明する。
第2回 『沈黙の春』:現代環境思想の出発点とされるレイチェル・カーソンの『沈黙の春』を中心に、現代環境思想が形作られた経緯とその内包する思想を考える。
第3回 産業革命と自然観(1):18〜19世紀産業革命の本質とは何か、人々の自然に対する認識や行動をどのように変えたのか。機械化・工業化社会と自然観の関係について模索する。
第4回 産業革命と自然観(2):産業革命後の人々は自然に対してどのような認識をもつにいたったのか。
第5回 古代文明と自然観(1):古代文明において人間と自然の関係性はどのように認識されていたのか議論する。
第6回 古代文明と自然観(2):古代ギリシャを中心に、古代世界における自然観を議論する。
第7回 中世・ルネサンスの自然観(1):古代ギリシャの影響を強く受けつつも、キリスト教の絶対的影響力があったなかで、ヨーロッパの人々は自然に対してどのような認識をもっていたのか考察する。
第8回 中世・ルネサンスの自然観(2):キリスト教の自然観と現代環境問題の関係とはどういったものか。
第9回 ヨーロッパの自然と思想:ヨーロッパの自然環境(地理的条件)は、人々の自然観をどのように形づくったのか?
第10回 科学革命、神、自然(1):16−17世紀科学革命を経て、人々は自然に対してどのような態度を示すようになったのか。西欧近代の初期における自然観の変化を検討する。
第11回 科学革命、神、自然(2):16−17世紀科学革命は、人々の世界の見方をどう変えたのか。
第12回 帝国主義と環境問題:18−19世紀の帝国主義全盛時代において、人々の活動は自然世界にどのような影響を及ぼしたのか、またその思想的背景はどのようなものだったのか考察する。
第13回 東アジアの自然観(1):古代中国の時代から形成されてきた東アジアの伝統的自然観とはどのようなものだったのか。またそれは現代のわれわれにどのように根付いているのか、あるいは断絶しているのか。
第14回 東アジアの自然観(2):近世日本の自然観とはどのようなものだったのか。
第15回 自然の権利:動物や自然の「権利」についてどのように議論されてきたのか、またどのような現状があるのか考察する。
授業外学習の課題 あらかじめ講義資料に目を通しておくこと。
参考文献を読むことを強く薦める(特に『緑の世界史』)。
履修上の注意事項 1) 授業計画は受講生の反応や理解度に応じて変更する可能性がある。
2) 受講生は大人の分別をもって講義に臨むこと。
3) 問いかけに対する積極的な発言を期待する。
成績評価の方法・基準 レポート(20%x3)と期末課題(40%)で評価する。レポート課題については授業中に説明する。課題提出が遅れた場合、特別の事情のないかぎり、減点措置をとる。
テキスト
参考文献 C.ポンティング『緑の世界史』朝日選書、1994年
鬼頭修一『自然保護を問い直す』ちくま新書、1996年
松野弘『環境思想とは何か』ちくま新書、2009年
R.カーソン『沈黙の春』新潮社、2001年など
L.ホワイト『機械と神』みすず書房、1999年
J.パスモア『自然に対する人間の責任』岩波現代選書、1998年
C.マーチャント『自然の死』工作舎、1985年
主な関連科目 「環境倫理学」
オフィスアワー及び
質問・相談への対応
原則的に月曜2限とするが事前に必ずアポをとること。他の日時を希望する場合は応相談。
質問は常時受け付ける。レポートについてのコメントは提出日の翌週に行う。
期末試験についての講評はMoodle上にて行う。

■カリキュラム情報
所属 ナンバリングコード 適用入学年度 配当年次
人間環境学部人間環境学科(マインド形成科目) 2011~2016 1・2・3・4
人間環境学部人間環境学科(マインド形成科目) FHES11106 2017~2017 1・2・3・4
人間環境学部人間環境学科(基礎科目) FHES23117 2018~2021 2・3・4