授業コード 70014700 クラス
科目名 法律特論B(憲法・行政法の重要基本判例) 単位数 2
担当者 横山 信二 履修期 後期授業
カリキュラム *下表参考 配当年次 *下表参考

授業題目 憲法・行政法の重要基本判例/Judicial precedents in Public Law
授業の概要 憲法と行政法の重要判例と基本判例を読み,判決(当該事件の法)が判例(特定の事件に示された法や理論が他の事件にも適用される一般法)となる意義を分析することによって,統治権の行使をコントロールする法を学ぶ。憲法と行政法は統治権の行使に関する法であり,公法(public law)と称される。とくに行政法は「具体化された憲法」として,統治権の具体的な作用である行政作用に関する法である。授業では,立法権・司法権・行政権という統治の3つの権力の行使に関する法的紛争(裁判所法3条1項「法律上の争訟」である事件)である憲法訴訟と行政訴訟を裁判した裁判所の判決が公法の判例となる意義を考察する。憲法訴訟の多くは,具体的には行政訴訟の形式をとるから,憲法訴訟のみならず行政事件を中心に形成されてきた公法判例を分析することによって,統治機構(立法と司法,それら2つの統治機関と行政機関との関係)と統治権力の限界に関する公法の重要または基本となる判例を分析する。
学習の到達目標 憲法訴訟と行政訴訟における事件について,まず当該事件の「事実」を把握し,その事実に関連する法(実定法,判例法など)を考え,事件の「争点」を考察する。次に,争点に「適用される法」と「事実との関係を解釈」し,争点の解決が法的に「説明される」かを検討する。そして,判決を読んで争点が正しく捉えられたかを確認し,争点に関する法を検討し,判例となる意義を分析する。この「事実の認定」「法適用解釈」「説明」できる能力を養成することによって,客観的な「論理的考察力」を涵養する。
授業計画 第1回 公法と判例
①判決と判例,②公法と判例法,③判例検索の方法
第2回 公法の適用 ⑴三菱樹脂事件(最大判昭和48年12月12日民集27巻11号1536頁)①事実と争点 ②判決の分析 ⑵公営住宅の利用関係(最判昭和59年12月13日民集38巻12号1411頁) ①事実と争点 ②判決の分析 ⑶公法の守備範囲と法(私法)
第3回 司法権の限界 ⑴砂川事件(最大判昭和34年12月16日刑集13巻13号3225頁)①事実と争点 ②判決の分析 ⑵市議会議員に対する処分(最判平成31年2月14日民集73巻2号123頁)①事実と争点 ②判決の分析 ⑶「法律上の争訟」(事件)と裁判権の行使
第4回 福祉国家における権力分立論 ⑴朝日訴訟(最大判昭和42年5月24日民集21巻5号1043頁)①事実と争点 ②判決の分析 ⑵永井訴訟(京都地判平成3年2月5日判タ751号238頁)①事実と争点 ②判決の分析 ⑶生存権の保障 ①憲法段階のプログラム規定説 ②立法段階の立法裁量論 ③行政法段階の行政裁量論 ④義務づけ訴訟と当事者訴訟の活用
第5回 地方自治 ⑴徳島市公安条例事件(最大判昭和50年9月10日刑集29巻8号489頁)①事実と争点   ②判決の分析 ⑵古都保存協力税条例事件(京都地判昭和59年3月30日行裁例集35巻3号353頁)①事実と争点 ②判決の分析 ⑶判例における地方自治
第6回 統治権による不法行為 ⑴ハンセン病訴訟(熊本地判平成13年5月11日判時1748号30頁。関連判決としてハンセン病患者家族訴訟[熊本地判令和元年6月28日])①事実と争点 ②判決の分析 ⑵東京予防接種禍訴訟(東京高判平成4年12月18日判時1445号3頁。参考判決として最判平成3年4月19日民集45巻4号367頁)①事実と争点 ②判決の分析 ⑶ ①立法の不作為 ②行政の不作為 ③統治権の不作為による国の損害賠償責任
第7回 思想・良心の自由 ⑴剣道受講拒否事件(最判平成8年3月8日民集50巻3号469頁)①事実と争点 ②判決の分析 ⑵長野勤評事件(最判昭和47年11月30日民衆26巻9号1746頁)①事実と争点 ②判決の分析 ⑶内心の自由(思想・良心の自由,信教の自由)と国家権力
第8回 集会の自由 ⑴泉佐野市民会館事件(最判平成7年3月7日民集49巻3号687頁)①事実と争点 ②判決の分析 ⑵皇居外苑使用不許可事件(最大判昭和28年12月23日民集7巻13号1561頁)①事実と争点 ②判決の分析 ⑶公共施設の利用による表現の自由
第9回 職業選択の自由(営業の自由) ⑴薬局開設の距離制限(最大判昭和50年4月30日民集29巻4号572頁)①事実と争点 ②判決の分析  ⑵公衆浴場営業許可(最判昭和47年5月19日民集26巻4号698頁)①事実と争点 ②判決の分析 ⑶職業選択の自由(営業の自由)と営業規制
第10回 財産権の保障 ⑴奈良県ため池条例事件(最大判昭和38年16月26日刑集17巻5号521頁)①事実と争点 ②判決の分析 ⑵ガソリンタンク移転の補償(最判昭和58年2月18日民集37巻1号59頁)①事実と争点 ②判決の分析 ⑶財産権の「公共の福祉」による制限と補償
第11回 社会権 ⑴堀木訴訟(最大判昭和57年7月7日民集36巻7号1235頁)①事実と争点 ②判決の分析 ⑵伝習館高校事件(最判平成2年1月18日民集44巻1号1頁)①事実と争点 ②判決の分析 ⑶社会権の実現と判例
第12回 適正手続 ⑴成田新法事件(最大判平成4年7月1日民集46巻5号437頁) ①事実と争点 ②判決の分析 ⑵個人タクシー事業免許不許可事件(最判昭和46年10月28日民集25巻7号)①事実と争点 ②判決の分析 ⑶適正手続の保障 ①デュー・プロセス・オブ・ロー(due process of law )②行政行為論と行政過程論(手続的権利の保障)
第13回 部分社会論 ⑴板まんだら事件(最判昭和56年4月7日民集35巻3号443頁)①事実と争点 ②判決の分析 ⑵富山大学単位不認定事件(最判昭和52年3月15日民集31巻2号234頁)①事実と争点 ②判決の分析 ⑶特別権力関係論の否定から部分社会論へ
第14回 新しい権利 ⑴大阪空港事件(最判昭和56年12月16日民集35巻10号1623頁)①事実と争点 ②判決の分析 ⑵内申書開示請求(大阪地判平成6年12月20日判時1534号3頁)①事実と争点 ②判決の分析 ⑶新しい権利
第15回 公法判例の動向(授業の整理) 
公法判例の検討を通じて,「公法判例の意義」についてディスカッション
授業外学習の課題 各回で検討する2件の事案について,それぞれの事案における「事実の概要」から客観的事実(読み手の主観をいれず,どのような事実があったのか)を読み取り,その事案で問われている「争点を整理」し,争点について論じた「判決」を読んで授業に臨むこと。
履修上の注意事項 この授業は対面(教室)で行います。

同時双方向:無、オンデマンド:無、課題研究:有(「事案の概要」をまとめ,判決について批評をレポートし,Moodleに提出)

憲法および行政法に関する事案を検討し,当該事案に適用される法を発見する考察力を養成する授業なので,各回の事案とその判決(裁判で発見され宣言された法)を事前に読んで授業に臨むことが最低限の努力である。授業は質問と応答で行い(ソクラテスメソッド),互いの意見を出し合いながら,多様な意見があることに気づくように心掛ける。
成績評価の方法・基準 質問に対する応答と積極的なディスカッションなど平常の授業態度を50%,期末に提示する事件について判例批評をレポートとして提出し,そのレポートを50%で評価する。
テキスト とくに指定しないが,すでに所有している憲法と行政法のテキストを持参すること(憲法または行政法のテキストを持たない場合は,購入することを勧める)。テキストの「判例索引」を参考に,事件の争点を見出だすことができる。
参考文献 『憲法判例百選』(有斐閣),『行政判例百選』(有斐閣)などの「判例集」。
主な関連科目 「憲法原論」「行政法」「地方自治法」「行政法総論」「法律特論A」「法律特論B(行政組織法)」
オフィスアワー及び
質問・相談への対応
授業後に,教室または非常勤講師控室で対応する。
添付ファイル 公法と判例.pdf 説明 公法と判例

■カリキュラム情報
所属 ナンバリングコード 適用入学年度 配当年次
国際コミュニティ学部地域行政学科(法律領域) 2018~2020 3・4