授業コード 93103902 クラス 02
科目名 行政法研究Ⅱ 単位数 2
担当者 山田 健吾 履修期 後期授業
カリキュラム *下表参考 配当年次 *下表参考

授業題目 行政救済法研究
the Theory Study on Administrative Remedy Law
授業の概要  紛争解決システムにおける行政救済法の役割、位置づけを明らかにした上で、行政不服審査法、行政事件訴訟法、国家賠償法制度および損失補償制度を中心に解説を加える。典型的・基本的な事案を用いながら、行政救済法の内容や訴訟手続全体の流れ、そして、そこにおいていかなる問題点があるのかについて講義する
学習の到達目標  本科目は、行政をめぐる紛争を適切に解決するために必要な素養を身につけるための基礎的・基本的科目である。ここでは、行政救済法の体系的理解に加えて、行政救済法の基礎的事項を正確に把握してもらうことを目的とする。
授業計画 第1回 行政救済の意義と種類
 行政救済法の概要を説明し、その意義について明らかにする。行政活動によって不利益を被った場合、当該行政活動の性質、当該行政活動の適法性によって、救済手続、救済機関、被告が異なることを説明する。
第2回 行政訴訟(1)訴訟要件① 取消訴訟の対象
 行政行為のメルクマールと処分性概念との相違、救済の必要性から導き出される処分性承認・否認の論理と司法救済拒絶の論理を明らかにする。
第3回 行政訴訟(1)訴訟要件① 取消訴訟の対象(続き)
第4回 行政訴訟(2)訴訟要件② 訴えの利益
 民事訴訟とは異なり、なぜ行政事件訴訟では原告適格が訴訟手続において重要な論点となるかを確認した上で、関連する裁判例を用いて裁判所の判断基準を理解する。また、原告適格において問題となる反射的利益論と客観訴訟化問題との関係を分析し、関連する裁判例の位置付けを検討する。
第5回 行政訴訟(2)訴訟要件② 訴えの利益(続き)
第6回 行政訴訟(3)訴訟要件③ 狭義の訴えの利益・被告適格・裁判管轄・出訴期間
 狭義における訴えの利益の存否に関する問題につき、関連する裁判例や設例を用い、様々な状況を想定し考察する。また、事情判決制度につき、「訴えの利益の消滅」を用いた処理と「事情判決」を用いた処理とを比較し、いずれの選択が適切かを考察する。抗告訴訟、とりわけ取消訴訟の訴訟要件を中心に説明する。ここでは、被告適格、裁判管轄、出訴期間について説明を行う。
第7回 行政訴訟(4)仮の権利保護の制度
 現行制度における執行停止制度と民事保全法の仮処分との関係を踏まえた上で、申請拒否処分や申請不受理に対する仮の権利救済の可能性を検討する。行政事件訴訟における仮の権利救済のあり方は、制度改革論議の一つの論点であり、現行制度の問題点や改善の方策についても論及する。
第8回 行政訴訟(5)審理・判決
 主張制限および理由の補充・差替について説明し、これらをめぐる論点について、裁判例および学説を用いて考察する。理由の補充・差替にかかわっては、理由付記制度が国民の権利保護の実現にとってどのような意味を有するのかについても説明を加える。
 立証責任分配、職権証拠調べについて説明する。立証責任分配については、行政事件訴訟法に規定がないため、行政法学独自の解決策が追求され、さまざまな見解が提示されていることから、学説・裁判例を整理することに重点をおく。
 違法判断の基準時について説明する。違法判断の基準時については、いかなる場合にそれが問題となるのかについて説明し、これをめぐる学説・裁判例の対立について検討を加える。
 訴訟参加、判決の効力および関連請求の移送・併合について説明する。これらについての民事訴訟のシステムを確認した後、訴訟参加、判決の効力および関連請求の移送・併合に関する行政事件訴訟法の規定について説明し、行政訴訟上の論点について、学説・裁判例を素材として検討を加える。
第9回 行政訴訟(6)無効確認訴訟・不作為の違法確認訴訟
 無効確認訴訟及び不作為の違法確認訴訟の訴訟要件及び本案勝訴要件を、学説・裁判例を通じて正確に理解する。
第10回 行政訴訟(7)義務付け訴訟・仮の義務付け・差止訴訟・仮の差止め
 義務付け訴訟の訴訟要件及び本案勝訴要件を、学説・裁判例を通じて正確に理解する。あわせて、仮の義務付けについても学説・裁判例を通じて正確に理解する。
 差止訴訟の訴訟要件及び本案勝訴要件を、学説・裁判例を通じて正確に理解する。あわせて、仮の差止めについても学説・裁判例を通じて正確に理解する。
第11回 行政訴訟(9)当事者訴訟・争点訴訟・仮処分の排除
 当事者訴訟について説明する。これに加え、行政庁の第一次判断権尊重論に基づく抗告訴訟モデルが、行政事件訴訟法改正によってどのように変容するのか、またはしないのかについて確認する。あわせて、争点訴訟、仮処分の排除についても、学説・裁判例を通じて正確に理解する。
第12回 行政上の不服申立・住民監査請求・住民訴訟・国地方係争処理制度
 行政不服審査法の概要を説明したうえで、審査請求前置が採られる理由を理解し、次いで、審査請求前置の場合でも、裁決を経ないで直ちに裁判所に出訴できるようなケースを、様々な状況を想定した設例や関連する裁判例を用いて考察する。加えて、処分取消訴訟と裁決取消訴訟との関係を理解するために、原処分主義の意義につき関連する裁判例を用いて検討する。
 客観訴訟の類型に属するもので、特に近年活発に活用されている住民訴訟につき、制度の仕組みと訴訟法上の論点を理解してもらう。同様に、地方自治における新たな争訟制度として、国地方係争処理制度における争訟についても検討し、現行制度の問題点を考えてもらう。
第13回 国家賠償法(1)国家賠償法1条・公務員の個人責任・規制権限の不行使、
国家賠償法と民法および特別法との異同を踏まえ、国家賠償法の意義を説明する。国家賠償法1条の責任要件とこれらをめぐる諸問題を考察する。あわせて、公務員の個人責任についても考察する。
第14回 国家賠償法(2)国家賠償法2条・国家賠償法3条ないし6条
 国家賠償法2条の責任要件とこれにかかわる諸問題を考察する。あわせて、国家賠償法3条ないし6条について考察する。
第15回 損失補償制度
 損失補償制度について、その伝統的な概念と根拠を説明し、損失補償の要件内容についての通説的見解を考察する。これらを踏まえ、損失補償法理論が現代行政に対応できているか否かについて分析を加える
授業外学習の課題  各回に関する論文についても学習をすること。
履修上の注意事項 1 予習事項・自習事項
 受講生は、あらかじめ配布された教材に基づき、次回授業の該当部分を事前に読み、各自、次の準備をする。
① 各回の目標を達成するために予め読んでおくべき資料[予習事項]には、「配付資料」と「参考資料」に掲げておく。
②  講義では取り扱わないが、より理解を深めるために自習すべき事柄やこれに関わる判例等[自習事項]については、「配付資料」でその旨を明示するので、予習・復習の際に精読すること。
③ 教材に示された説例や設問への解答・解決方法をあらかじめ考えておく。
④ 各回で取り上げる判例・裁判例については、《一般理論としてどのような意味があるのか》、そして、《個別事例としての分析》の、ふたつの事柄について予習しておくこと。
⑤ [配付資料]のはじめに、学ぶべき事項を掲げてあり、そこに、【基礎】・【展開】・【応用】・【自習】という表記がなされている。
(ア) 【基礎】とは定義や内容を正確に理解しおぼえておくべき事項のこと
(イ) 【展開】とは、【基礎】で理解し覚えた事項を踏まえて、当該事項につき、裁判例・判例・学説において、いかなる理由で、いかなる議論が展開されているか理解しておくべき事項のこと
(ウ) 【応用】とは、【基礎】【展開】事項を踏まえて、具体的事例において、個別法や事実関係を分析して考察できるようになるべき事項。
(エ) 【自習事項】は、期末試験の試験範囲に含まれるが、各受講生の自習に委ねる事項であり、原則として、講義では取り扱わない。
⑥ ただ、受講生の理解度によって、自習事項であっても講義で取り扱ったり、また、自習項目以外でも、自習項目に指定する場合がある。いずれの場合においても、講義においてその旨を指示する。

2 各回の授業
① 「配付資料」と「参考資料」の説明と、「配付資料」に掲げられた設問の解説を中心に講義を行う。その際、随時に受講生に質問を発し、解答を得るなど、双方向性を高めるよう工夫を施す。
② 事前に指示した設問について、受講生に適宜、質問し、理解の度合いを確認しながら講義を進める。
成績評価の方法・基準 レポート(60%)+授業で発言等(40%)で評価する。
テキスト 教科書はとくに指定しない。ただし、本科目は、塩野宏・行政法Ⅰ・Ⅱを独力で読めるようになることを一つの目標としています。
判例六法プロフェッショナル、行政法判例百選は必携。
参考文献 参考文献として、代表的な基本書を以下に掲げておく。塩野宏『行政法Ⅱ』、原田尚彦『行政法要論』、芝池義一『行政救済法講義』、小早川光郎『行政法下Ⅰ・Ⅱ・Ⅲ』、宇賀克也『行政法概説 Ⅱ 行政救済法』、橋本博之=櫻井敬子『行政法』弘文堂など。
主な関連科目 行政法研究Ⅰ、行政法演習Ⅰ及びⅡ
オフィスアワー及び
質問・相談への対応
(1)授業終了時に質問してください。

■カリキュラム情報
所属 ナンバリングコード 適用入学年度 配当年次
法学研究科M法律学専攻 2017~2019 1・2