授業コード 31009000 クラス
科目名 国際法 単位数 4
担当者 柳生 一成 履修期 後期授業
カリキュラム *下表参考 配当年次 *下表参考

授業題目 国際法 Public International Law
授業の概要  国際法は、主として国家・国際組織間の関係を規律する法と言われますが、外交関係、海洋、環境、人権、宇宙、国際経済、および武力紛争など多様な領域を規律しています。
 本授業はスライドを使用した講義形式を中心として、前半(第1回~第15回)においては、海洋や環境など重要な領域に関する基本的な制度および理論を概観するとともに、それらの領域に共通する総論的な事項を学びます。つまり、総論的な事項として、国際法の存在形式(法源)、条約の成立・解釈、国家責任などを理解します。
 授業の後半(第16回~第30回)においては、前半の知識を基礎として、各論的に、応用・発展的な領域や、前半で扱った領域における現代的問題を扱います。
学習の到達目標 この授業を履修することによって、
①国際社会における国家・国際組織などの活動や関係を規律する法の全体像を把握し、その理念や特徴を理解できるようになる、
②現代の国際社会における時事的な問題を的確に説明し、法的視点に基づいた意見を提示できるようになる、
ことが目標です。
授業計画 第1回 ガイダンス
授業の進め方、成績評価、予習・復習の方法などを説明します。その後、国際法とはどのような法か、およびその形成されてきた歴史を見て、国際法を勉強する意義を考えます。
第2回 国際法の主体(第1章)※カッコ内の章・節はテキストの該当範囲です。
国際法によって権利を持つ、または義務を負う者(主体)は誰かを見ていきます。国際社会において国際機構やNGOが活躍する現在においても、主な国際法の主体は国家です。よって、国家と認められるにはどのような条件が必要かなど、国家に関する国際法のルールも見ます。
第3回 国家の主権(第2章)
国家は主権を持つと言われますが、主権とは何か、そこから導かれる国際法のルールとはどういうものかを見ていきます。主権免除や外交特権もここで学びます。
第4回 国際法の存在形式(第3章)
国際法はどのような形で存在するのかを見ていきます。そのような国際法の主な法源は条約と慣習国際法です。条約に関するルールや国際慣習法の成立の仕方などについて見ていきます。
第5回 国際法の国内的実施(第4章)
国際法は国家間の関係を規律する法と言われますが、各国の国内でも重要な役割を果たします。そこで生じる国際法と国内法の関係などを学びます。
第6回 国際法の国際的実施(第5章)
ときには国家も国際法に違反します。その時に国家にはどのような責任が生じるのか、また国家が国際法を履行するための手段として国際コントロールを見ます。国際裁判など、国家間で紛争が生じた場合の解決の手段も見ます。
第7回 領域(第6章)
国家が領土などの領域を取得できる場合や、その領域に関し国家が持つ権利などを見ます。さらに、領域について国家間で紛争が生じた場合の解決に用いられるルール、日本が抱える領土問題も見ます。
第8回 海洋、南極、空、宇宙(第7章)
海に関する国際法として重要な国連海洋法条約の内容を、領海、排他的経済水域、公海などの海域別に見ていきます。その後、領空や防空識別圏など空に関するルール、どの国にも属さない南極や宇宙に関するルールを見ます。
第9回 人権(第8章)・中間テスト
現代の国際法において人権の保障はとくに重要となっています。国際法による人権保障の歴史的発展、人権に関する主要な条約、国家による人権保障を確保する国際的な制度などを見ます。
第10回 刑事(第9章)
国家間における犯罪人の引渡しから、ジェノサイド(集団殺害)罪などを犯した個人を処罰する国際的な裁判所まで、犯罪に関する色々なレベルの国際法のルールを見ます。
第11回 環境(第10章)
国境を越えて生じる環境への損害と地球全体の環境に与える損害それぞれに対して、国際法は防止のためのルールを発展させてきています。それらの基本的な原則を確認し、ルールを国家が遵守するよう確保する制度を見ます。
第12回 経済(第11章)
貿易や投資に関するルールを見ます。貿易に関しては、世界貿易機関(WTO)を協定を中心に、最近多く締結されている自由貿易協定や経済連携協定の概要を見ます。投資については、多くの投資協定に共通する条項および紛争が生じた場合の解決、とくに仲裁に関して概観します。
第13回 武力の規制(第12章)
核兵器その他の大量破壊兵器の規制、武力不行使原則とそれを確保するための国連の集団安全保障制度、集団安全保障の機能不全を補う形で発展したPKO、武力不行使原則の例外としての自衛権、さらに現実には数多く発生している武力紛争中におけるルール(国際人道法)などを見ます。
第14回 国際法に関する裁判例
国際司法裁判所、国際刑事裁判所など国際的な裁判所が出した重要な判決を中心に見ます。
第15回 総括
授業前半で学んだ重要な事項を振り返りつつ、それと関連した問題などを考察し、復習を行います。
第16回 講義後半に関するガイダンス
講義の後半の授業の進め方、予習・復習の仕方、参考文献などについて説明します。
第17回 国際労働法
第一次世界大戦後に設立された国際労働機関(ILO)は、労働条件に関する様々な条約を作成してきており、また各国によるその実施を監督しています。それらの条約のうち重要なものの内容と、履行確保制度を学びます。
第18回 国際経済法各論①国際投資法
国際投資の保護を目的とするルールは二国間条約によって発展してきましたが、現在では自由貿易協定(FTA)の中にも含まれるようになっています。そのルールの概要とそれまつわる諸問題(紛争解決制度など)をみます。
第19回 国際経済法各論②国際通貨・金融
国際通貨・金融に関する制度は、第二世界大戦後に設立された国際通貨基金(IMF)と世界銀行による体制が中心ですが、2008年の世界金融危機以降には大きな変化を遂げています。国際通貨・金融に関わる制度の歴史と現状を分析します。
第20回 国際経済法各論③国際租税法
「パナマ文書」「パラダイス文書」の内容が報じられ、多国籍企業による国際的な租税回避が問題となるなど、租税に関する国際的な枠組みが注目を集めています。経済協力開発機構(OECD)が作成したルールを中心に、租税に関する国際法をみます。
第21回 国際経済法各論④WTO紛争解決パネル(事例研究)、地域社会と国際法
授業の前半は、WTOの紛争解決パネルが出した判断のうち、日本に関する事件を見つつ、紛争解決手続の性質と重要性を確認します。後半は、地理的表示保護制度などを素材として、国内の地域社会と国際法とのつながりを探ってみたいと思います。
第22回 EU法
欧州連合(EU)法は、国際法、とくに国際経済法とのつながりが強いものの、独自の発展を遂げている部分もあります。その理論的重要性とは別に、欧州に進出した日本企業などにとって、その規制は無視できないものとなっています。今回は、EU法の骨組みを学びます。
第23回 ビジネスと国際人権
現在、企業の経済活動も国際法のルールと無縁ではいられません。企業活動は国際人権法や国際労働法とも関連しますが、ここでは国連グローバル・コンパクト(UNGC)、持続可能な開発目標(SDGs)に重点を置いて学びます。
第24回 個人・企業・国家の経済活動に関する国際法
第17回から第23階までの授業の内容を総括しつつ、個人に対する国連安全保障理事会の経済制裁などの問題も考察し、次回以降の個人が責任を負う場面を考察する準備も行います。
第25回 国際刑事法①
第10回で触れた国際刑事裁判所の活動を詳しく見ます。具体的には、実際の事件と関連させて訴訟手続きを見た後、国際刑事裁判所規程が定める4つの罪の内容を詳しく見ます。
第26回 国際刑事法②
前半は、旧ユーゴスラヴィア国際刑事裁判所などの判決にも触れつつ、国際刑事裁判所の重要判決を扱います。また、いくつかのアフリカ諸国が見せた裁判所への反発などを素材に、裁判所の問題点も探ります。後半は、国際経済刑法の説明をします。
第27回 国際海洋法
最初に、海洋法と環境法が交錯する、海洋環境の保護、海洋資源の管理などを見ます。次に、現在、国際司法裁判所が数多くの判決を出している境界の画定に関する事例研究を行います。
第28回 国内裁判における国際法 (事例研究)①
国際法に関する紛争は国家間で生じ、国際裁判所で扱われるというだけではありません。国内の裁判所も国際法を適用して紛争を解決することがあります。日本の裁判所が扱った国際法に関する代表的事件を見て行きます。
第29回 国内裁判における国際法 (事例研究)②
国内裁判所が国際法を適用して紛争を解決した事件の中から、戦後補償など、近年に日本の裁判所が扱った国際法に関する事件を見て行きます。
第30回 総括
本授業で扱ったテーマを振り返りつつ、テーマ相互の関連などを考察して、内容を復習します。
授業外学習の課題 ・復習を中心に行って下さい。重要な用語や制度を自らの言葉で説明できるようにしておいて下さい。
・予習について、前半については、指定テキストの該当箇所を読み、分からない部分を明らかにしておいて下さい。後半については、指示があった場合、事前に配布したレジュメ・資料を読んで、その内容をまとめて授業に臨んで下さい。
・授業外の学修は120時間行ってください。
・中間テスト・試験に関しては、翌週に解答を配布します。
履修上の注意事項 ・条約集(出版社)を問わないを必ず授業に持参して下さい(詳しくは授業初回ガイダンスで説明しますので、それを待って購入して下さい)。
・中間テストや補講などに関する質問は授業内で行って下さい。
・授業中の私語、スマートフォンの使用、居眠り、途中退室などは厳に慎んで下さい。教員からの注意を受けても態度を改めない者には、他の履修生への迷惑となるので、授業への参加を認めません。
※履修者数に応じて、グループ・ディスカッションなどアクティブラーニングの授業形式を部分的に導入することがあります。

【この科目は、グローバルコース対象科目(2014年度以降生)にもなっています。※ただし、一部の学部・学科では配当されていない場合があります。】
成績評価の方法・基準 中間テスト(20%)、定期試験(50%)、授業への参加度・課題への取組み(30%)を基礎として総合的に評価します。
テキスト 玉田大ほか『国際法』有斐閣、2017年、ISBN:9784641150454、定価 1800円+税
参考文献 ・浅田正彦編著『国際法』東信堂、第3版、2016など、国際法に関するいくつかの基本書・教科書などを適宜します。各論に関する参考文献(中川淳司ほか『国際経済法』有斐閣、第2版、2012年など)も随時紹介します。
・必要に応じ、資料としてレジュメを配布します。
主な関連科目 国際人権論
オフィスアワー及び
質問・相談への対応
授業終了時またはオフィスアワーに質問を受けます。それ以外の時間に質問を希望する学生は、日程調整のため、授業後に声をかけるか、または事前にメールして下さい。気軽に質問して下さい。

■カリキュラム情報
所属 ナンバリングコード 適用入学年度 配当年次
人文学部教育学科(教職専門科目群) 2016~2016 2・3・4
人文学部教育学科(教職専門科目群) FHED24313 2017~2017 2・3・4
人文学部教育学科(教職専門科目群) 2018~2019 2・3・4
法学部法律学科(国際関係法) 2007~2010 2・3・4
法学部法律学科(国際関係法) 2012~2016 2・3・4
法学部法律学科(国際関係法) FLLA20701 2017~2017 2・3・4
法学部国際政治学科(C群) 2011~2016 2・3・4
法学部国際政治学科(C群) FLIP20305 2017~2017 2・3・4
人間環境学部人間環境学科(関連科目) 2011~2016 3・4
人間環境学部人間環境学科(関連科目) FHES38102 2017~2017 3・4
健康科学部心理学科(心理学) FHPS42007 2017~2017 2・3・4