授業コード 31007000 クラス
科目名 民事訴訟法 単位数 4
担当者 豊田 博昭 履修期 後期授業
カリキュラム *下表参考 配当年次 *下表参考

授業題目 権利主張・事実・証拠
授業の概要 講義対象は、裁判所で民事事件を法律に則って解決する手続の過程・プロセスに関する法律、利用者である訴訟当事者からいうと、実体法上自分に存すると考える権利を裁判上主張し、裁判官の面前での審理・証拠調べを通じて終局判決によって、その権利ありと認めてもらうための手続に関する法律の学習ということになります。これが狭義の民事訴訟法であり、この講義のメインテーマです。98年1月から刷新されて20年経過した現行民事訴訟法、および現在のわが国の民事裁判制度の仕組みについて、一緒に勉強したいと思います。

講義の目標は、①当事者からみると、自己の権利を裁判上で実現するためには何をすべきか、権利は目に見えない存在です、しかし、実体法に定められた所定の事実に該当する具体的な事実を積み上げて、法律の世界で権利の発生や権利の消滅を示すことができます。相手方が争えば、動かぬ証拠で主張事実を固めます。これを裁判所側からみると、当事者の訴えの提起で始まる訴訟を、どのようにして審理し証拠調べを行い、判決や和解にもっていくかというプロセスであり、講義では、第一審手続の流れを確実に理解することが重要となります。
 当事者間の最大の争いは、権利関係の存否です。では、その権利が発生して存在する、または権利が消滅していまや
存在しない、と実体法が定めている事実を原告は提出しているのか、それとも被告はそんな事実はないと反論できているか。裁判所は当事者双方から提出された証拠を取り調べて、事実の存否を認定し、もって原告のいう権利の存否を判断します。以上が、この授業の中心的な部分であり、受講者に理解してもらうところです。裁判所の法適用、法的三段論法といわれる裁判の方法について、受講者が理解できるように努めます。民法を立てる話ともいわれます。民訴法をやると、あの詳細な民法の体系もわかりやすくなるはずです。
学習の到達目標 民事訴訟手続全体、特に原告の訴えの提起から裁判所の第一審手続、その概要を理解するように努めたいと思います。期末試験の範囲は、授業の早期の段階で申し上げます。それに狙いを定めて、全体の講義も進めていく予定でいますので、よろしく学習と理解に努めて頑張って下さい。
授業計画 第1回 民事紛争と紛争解決の方法、民事訴訟の役割
 世に民事紛争はたくさん発生します。こうした民事紛争に対して、どのような紛争解決つの精度があるのか。そのなかで、民事訴訟はどのような役割を果たしているのか。他の民事紛争解決手続との比較を通じて、民事訴訟とは何か、民事訴訟の目的や役割について考えてみましょう。
第2回 実体法と訴訟法
 裁判所の法的三段論法のやり方を改めて勉強しましょう。これを当事者の側から眺めると、この講義の題目にあげた「権利主張・事実・証拠」の学習でしょう。民法・会社法ではさまざまな権利が規定されています。しかし、権利は法理の世界の観念の産物です。民法は「法律要件→法律効果」という公式で、さまざまな権利・義務を定めています。民事訴訟はこの権利・義務をめぐる争いを解決することが目標であり、そうすると、その法律効果=権利を導く法律要件=事実を提出して、原告は我に権利ありと主張しなければなりません。これに対し、権利を争う相手方は反対事実を主張します。この争いを解決する手掛かりが、当事者提出の証拠です。双方当事者はそれぞれ証拠を提出し、裁判所は証拠調べを通じてどちらの言い分が真実かを解明します。
 民訴法の核心概念ともいえる「権利主張・事実・証拠」にいて、学習しましょう。
第3回 民事訴訟の開始・進行(1) 
 訴えの提起、特に訴訟物について考えます。具体的な事例で、訴訟物とは何か、その考え方、その役割について、学習しましょう。
第4回 民事訴訟の開始・進行(2) 
 受訴裁判所、司法権の問題(国際民事訴訟)
第5回 民事訴訟の開始・進行(3) 
 訴訟当事者の諸問題、多数当事者による訴訟ケースの概観
第6回 民事訴訟の開始・進行(4) 
 前回に続いて、訴訟当事者の諸問題、多数当事者による訴訟ケースの概観
第7回 民事訴訟の開始・進行(5) 
 訴え提起の効果 訴訟係属、二重起訴の禁止など
第8回 訴訟の審理(1)
当事者主義と職権主義。処分権主義の学習です。上記の「権利主張」の重要局面の一つです。
第9回 訴訟の審理(2)
弁論主義を中心に学習します。上記の「事実」主張の局面です。弁論主義とは何か、具体的な事例で当事者が主張すべき「事実」は何かを勉強します。本講義の一番重要なところに差し掛かります。
第10回 訴訟の審理(3)
前回に引き続いて、弁論主義を学習します。当事者は自ら事実を主張し、証拠を提出しなければならない。また裁判所の釈明権・釈明義務にいても考えましょう。弁論主義の補完として位置づけられる裁判所の権能です。
第11回 訴訟の審理(4)
事案の解明の主役は当事者にあるという弁論主義に対して、口頭弁論の進行については裁判所が責任を負うという職権進行主義があります。
 口頭弁論の主催者は、裁判所です。裁判所の口頭弁論はどのような基本原則に基づき進められるのか、学習します。
第12回 訴訟の審理(5)
 前回の続きとともに、口頭弁論を迅速か充実したものにするめに現行法がどのような争点証拠の整理手続きを規定しているのか、それらはどのように機能しているのか、学習します。
第13回 訴訟の審理(6)
 当事者の訴訟行為について学習する。特に「事実」主張に対して、相手方の争い方、その場合のその後の裁判所の手続はどのように違っていくのか、否認と抗弁の違いも考えたい。
第14回 訴訟の審理(7)
 前回に引き続いて、当事者の訴訟行為について学習する。つぎの証拠調べに向けて、当事者の証拠収集手段としてどのようなものがあるか、考えておく必要があります。
第15回 証拠調べ(1)
事実認定と証拠、証明の対象。上記の「証拠」の局面です。裁判所の事実認定とは何か、その際に真実の確信をするために、自由心証主義という原則がとられています。裁判官の心証のレヴェルとしての証明度についても学習します。
第16回 証拠調べ(2)
 当事者間で争いのない事実は、裁判上の自白とよばれて、裁判所の証拠調べは行われない建前がとられています。この裁判上の自白の諸問題について、学習しましょう。
第17回 証拠調べ(3)
 自由心証主義が尽きたところから、証明責任の分配法則が機能するといわれます。弁論主義のもとでの当事者の立証活動、それに対する裁判所の証明度のレヴェル問題、そして真偽不明という場面での証明責任とは何か。その場合に、証明責任の分配原則をどのように考えるか、こうした問題について学習します。
第18回 証拠調べ(4)
裁判所による具体的な証拠調べ手続を中心に学習します。
第19回 証拠調べ(5)
 前回に引き続いて、裁判所による具体的な証拠調べ手続を中心に学習します。
第20回 訴訟の終了(1)
当事者による自主的な行為による訴訟の終了を学習する。訴えの取下げ、訴訟上の和解、請求の放棄・認諾という方法、その法的効果など考えましょう。
第21回 訴訟の終了(2)
終局判決による訴訟の終了、訴訟要件の審理の問題、訴訟判決など学習します。
第22回 訴訟の終了(3)
 判決の成立・確定、判決の中心的な効力である、既判力・執行力・形成力を学習します。「権利主張・事実・証拠」そして重要なのが、既判力です。既判力とは何か、まずは既判力の基準時を中心に学習します。
第23回 訴訟の終了(4)
 判決の効力のうち、特に既判力の客観的範囲を中心に具体的な事例を用いて学習します。
第24回 訴訟の終了(5)
判決の効力、特に既判力の主観的範囲を中心に学習します。あわせて、執行力、形成力も学習しましょう。
第25回 多数当事者訴訟(1)
共同訴訟を中心に学習します。通常共同訴訟に対して、固有必要的共同訴訟、類似必要的共同訴訟の全体を、具体的判例を用いて学習します。
第26回 多数当事者訴訟(2)
第三者が訴訟に介入してくる形態があります。共同訴訟参加、補助参加、独立当事者参加、訴訟告知など学習します。
第27回 多数当事者訴訟(3)
訴訟中に当事者が代わるケースとして、当事者変更、訴訟の承継などを学習しましょう。
第28回 上訴手続(1)
第一審判決に対する不服申し立て手段としての控訴、控訴審判決に対する上告、これに対し、確定した判決に対する不服申し立て手段としての再審について、学習します。
第29回 上訴手続(2)
 前回に引き続いて、控訴、上告、再審を学習する。
第30回 まとめ
 期末試験対策を含めて、全体のおさらいをやります。
授業外学習の課題  授業の進行の程度に応じて、適宜文献および判例を指示した場合、積極的にそれらを読んで下さい。中間試験または任意提出のレポート課題を実施する予定でいます。自分で積極的に取り組む学習を期待します。
履修上の注意事項  実体法に関する授業も同時に受講して下さい。六法は最新のものを用意して下さい。いま前年度の試験採点を終えて、これを書いています。平均出席率71%でした。試験結果は、試験を受けられた方の6割が合格でした。若干の感想です。
 まず当たり前ですが、授業に出て、講義を理解し、教科書を読み、資料を読み、自分で分かるまで学習してください。
 18年度の期末試験では、従前に別の授業で用いた損害賠償請求訴訟を事例として用いました。事前に任意提出のレポートも課しました。しかし、これを自分で図書館で様々な文献を調べて、書き上げたというレポートが実に少ないように思います。この機会を利用して理解し、自分で書くというトレーニングを積んで下さい。それが、期末試験の合格答案につながると当方は考えています。
 配点20点の設問に対し、一行、二行の解答記述では得点は取れません。早い段階で試験範囲は開示して、そこに焦点を合わせて講義します。完全に分かったレヴェルまで勉強して下さい。
 中間テストを実施し、任意提出のレポート課題を課しました。レポート課題で真剣に勉強された方は、本試験でもよい成績につながるという「経験則」が確かにあると思います。努力は惜しまないで下さい。今年度も、受講者数も配慮しつつ、同様の方法で、受講者のみなさんの普段の学習成果が最終成績に反映できるように配慮したいと思っています。
 なお、受講態度について付言しますと、教室ではスマホ・携帯の電源を切ること、講義中の着帽・おしゃべり・立歩き・退出は、原則として禁じます。六法はスマホではなくて、通常のペーパーのもので普段から勉強して下さい。その他、レッドカード違反の行為は、開講時に申し上げます。
成績評価の方法・基準  学期末試験(70%)、中間試験(10%)およびレポート・受講態度など(20%)を総合評価して決定します。試験範囲は早期に通知する予定です。授業への取り組みの態度は、段階的に確認します。受講態度には、レポート課題に対する学習の程度・深化を含めます。
テキスト 中野貞一郎『民事裁判入門』(有斐閣、第3版補訂版、2012年)を使用します。大学生協を通じて購入できます。
参考文献 例えば、次のようなものがあります
(1)石川明編『民事訴訟法』(青林書院)
(2)中野貞一郎・松浦馨・鈴木正裕編『新民事訴訟法講義〔第3版〕』(有斐閣)
(3)加藤新太郎・細野敦『要件事実の考え方と実務〔第3版〕』(民事法研究会)
(4)上原敏夫・池田辰夫・山本和彦『基本判例 民事訴訟法[第2版補訂]』(有斐閣)
(5)伊藤眞・高橋宏志「民事訴訟法判例百選〔第四版〕」(有斐閣)
(6)小島武司編著『よくわかる民事訴訟法』(ミネルヴァ書房)など
主な関連科目 民事実体法領域の科目
オフィスアワー及び
質問・相談への対応
授業終了時に受け付けます。また時間があれば、研究室でも対応します。

■カリキュラム情報
所属 ナンバリングコード 適用入学年度 配当年次
法学部法律学科(民事法) 2007~2010 2・3・4
法学部法律学科(民事法) 2012~2016 2・3・4
法学部法律学科(民事法) FLLA20507 2017~2017 2・3・4