授業コード 30027000 クラス
科目名 行政救済法 単位数 2
担当者 山田 健吾 履修期 後期授業
カリキュラム *下表参考 配当年次 *下表参考

授業題目 行政救済法
Administrative Remedy Law
授業の概要 【授業科目の内容】
 紛争解決システムにおける行政救済法の役割、位置づけを明らかにした上で、行政不服審査法、行政事件訴訟法を中心に解説を加える。典型的・基本的な事案を用いながら、行政救済法の内容や訴訟手続全体の流れ、そして、そこにおいていかなる問題点があるのかについて講義します。
学習の到達目標  到達目標については、各回の授業計画に記載します。
授業計画 第1回 行政救済の意義と種類。そして、抗告訴訟と取消訴訟。
(1)内容
 行政救済法の概要を説明し、その意義について明らかにする。行政活動によって不利益を被った場合、当該行政活動の性質、当該行政活動の適法性によって、救済手続、救済機関、被告が異なることを説明する。
(2)到達目標
 行政救済(法)の概念及び特色について理解している。
 私人への侵害=過去、現在、未来の侵害に対応した行政救済方法について理解している。
 行政活動の適法性によって救済方法が異なることを理解している。
 法律上の争訟概念について理解している。
 原処分主義と裁決主義のそれぞれの場合の違法事由の主張について理解している。
第2回 行政事件訴訟法 訴訟要件① 取消訴訟の対象その1
(1)行政行為のメルクマールと処分性概念との相違、救済の必要性から導き出される処分性承認・否認の論理と司法救済拒絶の論理を明らかにする。
(2)到達目標
 処分性の有無について理解している。
 処分性の有無を裁判所がどのような点に着目して判断しているかについて理解している。
 行政処分の概念が、行政手続法、行政事件訴訟法、行政不服審査法においてどのように用いられているかを理解している。
第3回 行政事件訴訟法 訴訟要件① 取消訴訟の対象その2
(1)内容
 受講生が処分性に係る事例問題を授業に解答し、これを提出してもらう。この事例問題について解説する。
(2)到達目標
 「取消訴訟の対象その1」で学んだことを使って、事例問題を解答できるようになる。
第4回 行政事件訴訟法 訴訟要件② 訴えの利益その1
(1)内容
 民事訴訟とは異なり、なぜ行政事件訴訟では原告適格が訴訟手続において重要な論点となるかを確認した上で、関連する裁判例を用いて裁判所の判断基準を理解する。また、原告適格において問題となる反射的利益論と客観訴訟化問題との関係を分析し、関連する裁判例の位置付けを検討する。
(2)到達目標
 原告適格の有無について理解している。
 原告適格の有無を裁判所がどのような点に着目して判断しているのかを理解している。
 行政事件訴訟法9条2項の趣旨を理解している。
第5回 行政事件訴訟法 訴訟要件② 訴えの利益その2
 (1)内容
 受講生が訴えの利益に係る事例問題を授業に解答し、これを提出してもらう。この事例問題について解説する。
 (2)到達目標
 「訴えの利益その1」で学んでことを実際に用いて、訴えの利益に係る事例問題を解答できるようになる。
第6回 行政事件訴訟法 訴訟要件③ 狭義の訴えの利益・被告適格・裁判管轄・出訴期間
(1)内容
 狭義における訴えの利益の存否に関する問題につき、関連する裁判例や設例を用い、様々な状況を想定し考察する。また、事情判決制度につき、「訴えの利益の消滅」を用いた処理と「事情判決」を用いた処理とを比較し、いずれの選択が適切かを考察する。抗告訴訟、とりわけ取消訴訟の訴訟要件を中心に説明する。ここでは、被告適格、裁判管轄、出訴期間について説明を行う。
(2)到達目標
狭義の訴えの利益の有無について理解している。
狭義の訴えの利益について、裁判所がどのような点に着目して判断しているかについて理解している。
不服申立てと取消訴訟の関係のうち、自由選択主義と不服申立前置主義のいずれが採用されているかについて理解している。
裁決主義について理解している。
出訴期間の起算点及び徒過したことについての正当理由について理解している。
処分庁及び被告適格を有する者は誰かについて理解している。
第7回 行政事件訴訟法 仮の権利保護の制度と審理・判決
(1)内容
 ①仮の権利保護
現行制度における執行停止制度と民事保全法の仮処分との関係を踏まえた上で、申請拒否処分や申請不受理に対する仮の権利救済の可能性を検討する。行政事件訴訟における仮の権利救済のあり方は、制度改革論議の一つの論点であり、現行制度の問題点や改善の方策についても論及する。
 ②審理・判決
主張制限および理由の補充・差替について説明し、これらをめぐる論点について、裁判例および学説を用いて考察する。理由の補充・差替にかかわっては、理由付記制度が国民の権利保護の実現にとってどのような意味を有するのかについても説明を加える。立証責任分配、職権証拠調べについて説明する。立証責任分配については、行政事件訴訟法に規定がないため、行政法学独自の解決策が追求され、さまざまな見解が提示されていることから、学説・裁判例を整理することに重点をおく。
 違法判断の基準時について説明する。違法判断の基準時については、いかなる場合にそれが問題となるのかについて説明し、これをめぐる学説・裁判例の対立について検討を加える。
 訴訟参加、判決の効力および関連請求の移送・併合について説明する。これらについての民事訴訟のシステムを確認した後、訴訟参加、判決の効力および関連請求の移送・併合に関する行政事件訴訟法の規定について説明し、行政訴訟上の論点について、学説・裁判例を素材として検討を加える。

(2)到達目標
①仮の権利保護
行政事件訴訟法における執行不停止原則の意義を理解している。
執行停止の申立てを認める決定の効力について理解している。
執行停止の申立ての趣旨(効力停止、執行停止、続行停止)及びその理由について理解している。
内閣総理大臣の異議制度の意義を理解している。
②審理・判決
行政事件訴訟法10条1項にいう自己の法律上の利益に関係のない違法について理解している。
原告の主張しうる違法事由が制限されるべきかどうかを裁判所がどのように判断しているかについて理解している。
取消訴訟において被告による理由の差替えが限定されるかどうかについて理解している。
主張立証責任について理解している。
職権証拠調べについて理解している。
取消訴訟における違法判断の基準時の特徴を理解している。
取消判決と事情判決の異同を理解している。
事情判決をすべき場合と、訴えの利益が提訴後に消滅したことを理由にする却下判決をすべき場合との違いを理解している。
取消判決の形成力とその第三者効の意義を理解している。
取消判決の拘束力について理解している。
取消訴訟の終局判決の既判力について理解している。
行政事件訴訟法において義務付けられる教示の内容について理解している。
行政事件訴訟法上の教示がなされなかった場合、及び教示が誤ってされた場合それぞれの救済について理解している。
第8回 行政事件訴訟法 無効等確認訴訟・不作為違法確認訴訟
(1)内容
 無効確認訴訟及び不作為の違法確認訴訟の訴訟要件及び本案勝訴要件を、学説・裁判例を通じて正確に理解する。
(2)到達目標
取消訴訟に加えて無効等確認訴訟(行政事件訴訟法3条4項)が定められている理由を理解している。
行政事件訴訟法36条の定める無効等確認訴訟の訴訟要件について理解している。
無効等確認訴訟における原告適格ないし訴えの利益の有無について理解している。
処分の無効事由の有無について理解している。
処分の無効事由として指摘すべき事情が何かを理解している。
不作為違法確認訴訟の訴訟要件と本案勝訴要件について理解している。
不作為違法確認訴訟における相当の期間と、行政手続法における標準処理期間との関係を理解している。
第9回 行政事件訴訟法 義務付け訴訟・仮の義務付けと差止訴訟・仮の差止め
(1)内容
 義務付け訴訟の訴訟要件及び本案勝訴要件を、学説・裁判例を通じて正確に理解する。あわせて、仮の義務付けについても学説・裁判例を通じて正確に理解する。
 差止訴訟の訴訟要件及び本案勝訴要件を、学説・裁判例を通じて正確に理解する。あわせて、仮の差止めについても学説・裁判例を通じて正確に理解する。
(2)到達目標
①義務付け訴訟
義務付け訴訟の2類型(申請型と非申請型)の存在意義について理解している。
申請型義務付け訴訟の併合提起の意味を理解している。
義務付け訴訟(申請型と非申請型)の訴訟要件を理解している。
義務付け訴訟(申請型と非申請型)の本案主張の内容を理解している。
仮の義務付けの申立制度の存在意義について理解している。
仮の義務付けの申立ての趣旨及び理由について理解している。
②差止訴訟
差止訴訟の存在意義について理解している。
差止訴訟の訴訟要件について理解している。
差止訴訟の本案主張の内容について理解している。
仮の差止めの申立制度の存在意義について理解している。
仮の差止めの申立ての趣旨及び理由について理解している。
第10回 行政事件訴訟法 当事者訴訟・争点訴訟・仮処分の排除-その1
(1)内容
 当事者訴訟について説明する。これに加え、行政庁の第一次判断権尊重論に基づく抗告訴訟モデルが、行政事件訴訟法改正によってどのように変容するのか、またはしないのかについて確認する。あわせて、争点訴訟、仮処分の排除についても、学説・裁判例を通じて正確に理解する。
(2)到達目標
実質的当事者訴訟の存在理由について理解している。
実質的当事者訴訟としての確認訴訟の提起がいかなる場合に認められるかについて、理解している。
実質的当事者訴訟の請求の趣旨の立て方について理解している。
確認訴訟における確認の利益の有無について理解している。
実質的当事者訴訟の本案主張の内容について理解している。
処分性の判定の場面において、取消訴訟と実質的当事者訴訟の得失をどう考えるべきかについて理解している。
処分に関わる紛争において、抗告訴訟(とりわけ処分差止訴訟)のほかに実質的当事者訴訟が使われる場面があるかどうかについて理解している。
形式的当事者訴訟について理解している。
実質的当事者訴訟における仮の救済に必要な範囲で、民事保全法の概要を理解している。
私人が国又は地方公共団体に対して提起する民事訴訟として、どのようなものが考えられるかについて理解している。
行政事件訴訟法にいう争点訴訟について理解している。
第11回 行政事件訴訟法 住民監査請求・住民訴訟・国地方係争処理制度
(1)内容
 客観訴訟の類型に属するもので、特に近年活発に活用されている住民訴訟につき、制度の仕組みと訴訟法上の論点を理解してもらう。同様に、地方自治における新たな争訟制度として、国地方係争処理制度における争訟についても検討し、制度の問題点を考えてもらう。
(2)到達目標
住民訴訟制度について理解している。
国地方係争処理制度について理解している。
第12回 行政上の不服申し立て
(1)内容
 行政不服審査法の概要を説明したうえで、審査請求前置が採られる理由を理解し、次いで、審査請求前置の場合でも、裁決を経ないで直ちに裁判所に出訴できるようなケースを、様々な状況を想定した設例や関連する裁判例を用いて考察する。加えて、処分取消訴訟と裁決取消訴訟との関係を理解するために、原処分主義の意義につき関連する裁判例を用いて検討する。
(2)到達目標
行政不服審査法に基づく不服申し立てについて理解している。
行政不服審査法に基づく処分または不作為についての不服申立てをするための要件について理解している。
行政不服審査法が申立人のためにどのような手続保障を定めているかについて理解している。
行政不服審査法における裁決と決定の種類 (認容・却下・棄却の裁決・決定のほか、事情裁決・決定)及び認容の裁決・決定の内容(取消し・撤廃・変更ないし修正)について理解している。
行政不服審査法の定める仮の救済と、行政事件訴訟法のそれとの異同について理解している。
行政不服審査法において義務付けられる教示の内容を理解している。
行政不服審査法上の教示がなされなかった場合、及び教示が誤ってされた場合の救済について理解している。
第13回 国家賠償法(1)国家賠償法1条・公務員の個人責任・規制権限の不行使、
(1)内容
 国家賠償法と民法および特別法との異同を踏まえ、国家賠償法の意義を説明する。国家賠償法1条の責任要件とこれらをめぐる諸問題を考察する。あわせて、公務員の個人責任についても考察する。
(2)到達目標
国家賠償請求訴訟を提起すべき場面について理解している。
国家賠償法1条の責任の性質を、民法の不法行為規定との異同を理解している。
国家賠償法1条の責任が認められる場合に公務員個人責任が認められるかどうかについて理解している。
国家賠償法(1条・2条)が適用される場合と、民法の不法行為規定が適用される場合との振り分け基準について理解している。
国家賠償法1条にいう「国又は公共団体」、「公権力の行使」及び「公務員」の意義について理解している。
国家賠償法1条にいう「職務を行うについて」の意義について理解している。
国家賠償法1条の違法の有無について理解している。
国家賠償法1条の違法と過失の関係について理解している。
国家賠償法1条の違法と、取消訴訟における違法の異同について理解している。
第14回 国家賠償法(2)国家賠償法2条・国家賠償法3条ないし6条
(1)内容
 国家賠償法2条の責任要件とこれにかかわる諸問題を考察する。あわせて、国家賠償法3条ないし6条について考察する。
(2)到達目標
国家賠償法2条の責任の性質を、民法の不法行為規定と比較しながら、条文に則して説明することができる。
国家賠償法2条にいう「公の営造物」の意義を、具体例を挙げて説明することができる。国家賠償法2条にいう設置管理の瑕疵について理解している。
国家賠償法2条にいう設置管理の瑕疵のうち、供用関連瑕疵について理解している。
国家賠償法2条の設置管理の瑕疵につき、河川と道路の異同について理解している。
国家賠償法3条(費用負担者の賠償責任)の意義について理解している。
国家賠償法4条(民法の適用)及び5条(他の法律の適用)の意義を理解している。
国家賠償法6条(相互保証主義)の意義について理解している。
国家賠償請求訴訟において勝訴するために取消判決を得ておく必要があるかどうかについて理解している。
第15回 損失補償制度
(1)内容
損失補償制度について、その伝統的な概念と根拠を説明し、損失補償の要件内容についての通説的見解を考察する。これらを踏まえ、損失補償法理論が現代行政に対応できているか否かについて分析を加える。
(2)到達目標
憲法29条3項による損失補償の要否について理解している。
憲法29条3項による補償内容について理解している。
損失補償と国家賠償の谷間と称される問題について理解している。
個別法における補償規定のうち、憲法29条3項の趣旨の具体化とされるものがあることについて理解している。
授業外学習の課題 各回の講義内容の予習および授業で指定された課題の提出が求められます。具体的内容は、授業時に指示します。
履修上の注意事項 (1)講義には、六法を必ず持参すること。
(2)「行政組織法」、「入門行政法」・「行政法総論」の履修が望まれます。

成績評価の方法・基準 期末試験(70%)および課題提出等授業の取組み(30%)で総合的に評価します。
テキスト 授業資料を配布し、これに基づいて授業を行います。
参考文献 塩野宏『行政法Ⅱ(第6版』(有斐閣)
宇賀・交告・山本編『行政判例百選Ⅱ(第7版)』(有斐閣)
芝池義一編『判例行政法入門』(有斐閣)
その他必要な文献は適宜紹介します。
主な関連科目 行政組織法、入門行政法、行政法総論、総合教養講義a(市民と行政法)など。
オフィスアワー及び
質問・相談への対応
(1)当日出席した講義について質問があれば、講義終了時にすぐに質問をしてください。あとで質問しようとしても、忘れることが多々あります。
(2)本講義以外のこと、例えば、公務員試験の勉強の仕方、資格試験の勉強の仕方、司法試験受験に向けての勉教についても質問してください。

■カリキュラム情報
所属 ナンバリングコード 適用入学年度 配当年次
法学部法律学科(公法) 2007~2010 2・3・4
法学部法律学科(公法) 2012~2016 2・3・4
法学部法律学科(公法) FLLA20308 2017~2017 2・3・4